「てっかみそ」。その名前は、桜沢如一氏の本にも食物療法の「最高貴薬」として紹介されてもいる(*1)ので知ってはいた。
だが、実際に手を出す気にはずっとなれないでいた。
味のイメージがわかない
「てっかみそ」というくらいなのだから「味噌」なのだろう。「食養家の日常愛用すべきもの」(*2)と言われても、味噌をどうやって日常に使うというのか。味噌汁用の味噌はお気に入りのものがあるし、ご飯にのせるといってもあまり美味しくなさそうだ。
作り方を見ても、いまいち味のイメージがわかない。
「蓮根、人参、牛蒡、蒟蒻、生姜等の細く切り刻みしを入れ、充分にいため、後つぶみそを五十匁ほど入れ、とろ火にてゆっくりかき混ぜながらぼろぼろになるまで炒り上げる」。(*3)と『新食養療法』はあるが……。
ぼそぼそしていて、しょっぱいのだろうか?
味も用途もいまいちわからないのでは、使う気になれないのも仕方なかった。
一度は食べてみなければ
しかし、マクロビオティック実践者である以上、たびたび本に出てくるてっかみそを無視し続けるわけにもいかない。そんなに優れているのなら、実際に食べて、効果を確かめてみなければ。
手作りもできるらしいが、ここはまず基本の味を知ろう。私はオーサワジャパンから出ているてっかみそを、一瓶買い求めた。
なんとも素朴な立ち姿ではある。ラベルに筆文字で大きく書かれた「てっか」の字が風格を漂わせる。中は黒々として、全貌がうかがい知れない。
フタを開け、鼻を近づけた。ふわっと香ばしい匂いが立つ。ん? なんだ、この美味しそうな匂いは。甘じょっぱくてコクのある香り。思わずツバが出てくる。
よく肥えた土のようにふっくらさらさらしたてっかみそを、つまようじの先に少量つけてなめてみた。途端に、舌の一点から、旨味が広がる。
美味しい
これは美味しい! 原材料は「豆味噌・胡麻油・ごぼう・人参・れんこん・生姜 」だけなのに、みりんを加えたような甘さがある。
野菜の佃煮とでも言おうか。でも、佃煮ほどしつこくない。ふりかけとも言えるだろうか。でも、ふりかけほどしょっぱすぎない。
豆味噌の風味と、ごま油のコク、野菜からにじみ出た旨味。これは何にでも合いそうだ。
私は手始めに、薄切りにしたきゅうりにてっかみそをかけて食べてみた。
うん、これはイケる! ただ味噌をつけたときより、味わいに奥行きがあって、こじゃれた一品料理のようだ。薬としての陽性の効果だろうか、体がシャッキリと元気に目覚めていくような感覚もある。
続けて、梅干し、すりゴマと合わせて、おにぎりの具にしてみた。
そうしたら、これがまたヒット! すべての素材の味を引き立てながら、てっかみその味わいも生きている。このおにぎりだけで、おかずが何もなくても満足する。
すっかりハマってしまい、以来、鉄火味噌おにぎりと名づけて毎日食べている。
もっと認められるべき
かくして、思いきり疑いの眼差しを向けていたてっかみそにすっかり惚れ込んで、ありがたく毎日食べるようになったわけだが、瓶を見るたび思う。
てっかみそ。地味だ。あまりに地味だ。目立たない。中身も、黒いつぶつぶだし、どうにもアピールのしようがない。
このてっかみそがこんなに美味しいなんて、一体どれだけの人が気づいているだろう。私のように、よほど事情があって手を伸ばした人にしかわからないのではないか。
それはもったいない! 日本国民の常備食としてもふさわしいほど美味しいし、体にも良いのに。
もっと認められるべき! そう私が思う食品の筆頭がてっかみそだ。
陰性の病気(糖尿病、腎臓病、婦人科系、夏バテなど)にならなんでも効く「最高貴薬」にして、ご飯の友。手作りすると完成までに三時間以上はかかる(てっかみそのレシピはこちら)、魂のこもった情熱の常備菜。
健康に興味のある方なら、ぜひぜひ、一度試していただきたい!
(2021年追記:現在は瓶入りだったのが袋入りにリニューアルされている。↓)