新料理長の料理
前回の訪問から五ヶ月。齊藤料理長に代わり新しく就任なさった塩見料理長の料理を今回初めていただきます。
塩見料理長は京都の旅館「美山荘」で副料理長をなさっていた方なのだそうです。
↑一階席から見える中庭。やはり私は、二階から見る庭より、一階から見る庭の眺めの方が好きだなあ。
↑(参考画像:おかだ紅雪庭の二階特別室から見た庭。「1万2千円会席コース」記事より。)
昼御膳+一品料理
今回注文するのは「昼御膳」(3000円)です。事前に予約しておきました。(予約すると確実ですが、予約なしでも一日限定20食まで出してくれます。)
↑メニューを見ると、以前に比べ「一品料理」が増えています。せっかくなので、この中から「茶碗蒸し」(630円)と「野菜のたいたん」(840円)も頼むことに。
↑おしぼりとほうじ茶。
本日のお重
↑昼御膳、最初の「本日のお重三点」到着です。
↑左が「手作り豆腐の三升漬けがけ」。クリーミーな豆腐に、しょっぱくてちょっとピリ辛の三升漬けが合っています。ただ醤油をかけるだけより洒落ていますよね。
↑真ん中は鰹のたたき。かぼちゃの千切りとおろし生姜、ミニトマトが添えられおり、別皿の醤油につけていただきます。
北海道では珍しい「鰹のたたき」
こちらの鰹のたたき、少し生温かかったのは、火で炙った直後だったからでしょうか。北海道では「鰹のたたき」という料理はあまりなじみがなく、こうして食べられるのは貴重です。
鰹らしい、鉄分豊富そうな濃い味わいが美味しかったですよ! 秋の「戻り鰹」のたたき。旬のものって良いですね。(ただ、臭いの強い魚が得意でない母は、ちょっと生臭いと言っていました。もう少し薬味が多い方が母には食べやすかったかも……。)
秋らしい
↑右端は「もずく酢、だし巻き卵、花かぶら、穴子、大根寿司」。菊の花びらが散らしてあるのが秋らしいです。
穴子がふっくらとしていて美味しかったです。大根寿司はご飯をたくわんで包んだ感じのもので、アイディア料理ですね。
きのこ汁
↑お重三点の次は「料理長おすすめの一品」、今日は「きのこ汁」でした。里芋と、なめたけ、えのきだけ、舞茸が入っています。きのこはすべて愛別産。
↑赤いお椀に一人分を取り分けて食べました。汁は、かけそばのつゆのような味で、汁物として食べるにはちょっとしょっぱい。主に具だけを食べる感じになりました。
汁物として、味噌仕立てなんかになっていても良かったかも? ……と個人的には思ったりしました。でも、里芋ときのこなんて、ここでも秋をばっちり感じられて良かったです。
盛り蕎麦
↑昼御膳の主食、「盛り蕎麦」です! こちら、「季節のご飯」も選べたのですが、蕎麦が売りのおかだ紅雪庭ですから、蕎麦にしておきました。
蕎麦打ち名人として有名だった齊藤料理長はおかだ紅雪庭を去ってしまいました。新しく入った蕎麦打ち職人さんもとても腕の良い方だと女将さんから聞いているのですが、果たして……。
美味しい
食べてみると、齊藤料理長の蕎麦よりもシャキシャキ感が少し弱くなったものの、確かに「おかだ紅雪庭の美味しい蕎麦」は健在でした。
齊藤料理長時代は「一・九蕎麦」(小麦粉1:蕎麦粉9)だったのを、新しい蕎麦打ち職人さんになってから「二・八蕎麦」(小麦粉2:蕎麦粉8)にしたとのことで、蕎麦粉の割合が減った分、蕎麦の香りにも影響が出ているかなと思いますが、齊藤料理長の蕎麦とほぼ遜色ないものであると思います。
新しい蕎麦打ち職人さんには、おかだ紅雪庭の看板を背負って、ますます頑張っていただきたいと思います!
茶碗蒸しは大人味
↑次は、昼御膳とは別に頼んだ「茶碗蒸し」。私が今まで外食で食べた茶碗蒸しの中で一番甘みが薄いです。ダシのきいた大人味。中に、ゴロンと具が入っていて、聞くと「カンパチ」(魚)とのこと。
カンパチは、刺身としては美味しいですが、こうして火が通るとちょっと生臭みが強くなりますね。
濃い味のタレなどと一緒に食べればまた違うのでしょうが、茶碗蒸しのような薄味のものと食べると、ダイレクトに生臭みを感じてしまい、食べにくさがありました。
同じ魚なら、もっと癖のない白身などを入れてもらった方が良かったかな? もしくは蟹とか……。
野菜の煮物
↑続いて、一品料理その2、「野菜のたいたん」。ごぼう、椎茸、にんじん、レンコン、こんにゃく、ほうれん草と、根菜類がいっぱいです。
↑一皿を取り分けて二人で食べました。見た目は筑前煮っぽいですが、あの筑前煮の甘みはなく、ダシ汁メインの上品な味わい。
野菜に火が通った直後に火を止めた感じの、煮えすぎていないシャキシャキの歯触りが良かったです。それでいて、中にまでしっかりダシがしみているんですよね。
デザート
↑さて、ラストは、昼御膳のデザート「りんごのシャーベット+和梨と洋梨のコンポート、アイスティー」です。
↑容器に入っているのがシャーベット。ちょっぴり洋酒の香りも感じるような味わい。サクサク美味しい。コンポートは、和梨のシャクシャク感と洋梨のなめらかさ、それぞれの個性を楽しめました。
↑アイスティー。こちら、「ムレスナティー」という、天然の香料で香りづけされた紅茶。おかだ紅雪庭ではおなじみです。
あふれんばかりの桃やジャスミンの香りが鼻腔を抜けていきます。お茶っぽい渋みや苦みはほとんどありません。
シャーベットにアイスティーなので、ちょっと寒くなってしまいました……。できればホットも選べたらありがたかったかなあ。
こんな感じで食事が終わりました。お客さんは私たちの他に一組しかおらず、店内を静かな空気が流れていました。
新料理長は魚中心の印象
新料理長の料理、堪能させていただきました。料理の中に「秋」がよく表現されていて、食べるのが楽しかったです。このように、食事の中に季節が見えるのが日本料理の醍醐味ですよね。
前(齊藤)料理長との違いですが、前料理長は「鴨肉」や「揚げ物」をよく出されていたのに対し、新(塩見)料理長は穴子や鰹などの「魚」を多く取り扱っている印象を持ちました。
新料理長が作る会席コースはどんな内容になるのだろう? 興味がわきました。いつか、ぜひ食べてみたいなと思います!
新料理長になって初めてのおかだ紅雪庭。昼御膳で(他のコースでも)、食事が「盛り蕎麦」以外に「季節のご飯」というのが選べるようになったのが大きな変化だなと思いました。
一品料理が増えたのも嬉しいです。
齊藤料理長が去ってしまって、寂しかったし、これからおかだ紅雪庭の蕎麦や料理はどうなってしまうのだろうと不安だったのですが、腕のある後継者の方々が来てくださったようで安心しました。
齊藤料理長が残してくださった良いものを引き継ぎながらも、またおかだ紅雪庭の新しい伝統を作っていっていただきたいと思います。