初・おかだ紅雪庭
2012年4月6日にオープンした、北海道旭川市きっての高級蕎麦処おかだ紅雪庭(こうせつてい)。
酒蔵「北の誉」オーナーの自宅として昭和8年に建てられた「旧岡田邸」という完成まで二年を要した豪邸を蕎麦処として生まれ変わらせたお店で、登録有形文化財である建物の中で食事ができます。
格の高さ
昭和8年当時、旧陸軍第七師団の師団本部が設置された旭川は、軍都として賑わっていました。旧岡田邸は、その時代の雰囲気を味わえる貴重な建物です。
また、昭和9年、13年には皇室の方も宿泊されたということから、その格の高さもうかがえます。
料理長は、かの有名な招福楼(滋賀県の懐石料理店)で修行を積み、その後、ザ・ウィンザーホテル洞爺の高級蕎麦店「達磨」で店主を務めていた齋藤弘文氏(*注)。
三月に北海道新聞で取り上げられているのを見て、ぜひ行ってみたいと思い、今回、母と二人で満を持しての初訪問です!
素敵なしつらえ
↑ステンドグラスのはまった玄関ドア。
↑玄関ホールには輝くシャンデリア。創建当時のものなのだそうです。
手すり、ソファー
↑階段手すりの細工も凝っています。
↑玄関ホールに置いてあるソファーは、元々応接室にあったもの。布を新しく張り替えて使えるようにしたそうです。実際に座ってみると、バネがしっかりしていて、新品のような座り心地です。(布を張り替えた業者は、北海道東川町の「北の住まい設計社」)
↑玄関ホールの壁に、この旧岡田邸を再興するために寄付した人や企業の名が書かれた木札が貼られています。シャンデリアの光が映って綺麗です。
畳の廊下を通って
玄関ホールはフローリングですが、食事場所につながる廊下は畳敷き。まだ新しい、青々と柔らかな畳の上を歩いて、奥の部屋に案内されます。
「カウンター席とテーブル席、どちらになさいますか?」と途中で聞かれ、私たちはテーブル席へ行くことに。
↑こちら、カウンター席。元・応接室です。
↑私たちが選んだテーブル席。元・仏間です。写真左にある、中央に金具のついた白い扉の中に、大きな仏壇が入っていたそうです(現在は撤去)。
百合の花
↑床の間には百合の花が生けてありました。お花の先生が来て生けているのだそうです。
↑仏壇入れの横の目立たない小さな床の間にも、可愛らしく花が生けてあります。
飾り障子
↑床の間横の障子の上にも細工が。
↑テーブル横の飾り障子。わらびの細工が可愛いです。
ふすまを開けてもらう
↑仏間をしきっていたふすまを、客が他にいないということで開けて見せてもらいました。すると、六人がけのテーブルが二台お目見え。プラズマクラスター発生器つき空気清浄機もあります。
このお店は、全部の部屋に空気清浄機があります。その上完全禁煙ですから、とても清々しい空気の中食事ができて最高です。なかなか、禁煙の店ってないんですよね……。
そして、気づきにくいポイントですが、各テーブルごと、椅子に張ってある革の色が違います。テーブル、椅子ともに特注品とのことで素敵です。この店のイメージに合わせ、京都の職人さんに作ってもらったそうです。
欄間細工にも意味が
↑欄間の細工は「カブと大根」。これだけを食べていれば健康に生きていけるという質素倹約の象徴なのだそうです。
↑大根の隣の、「カブ」。
↑奥の和室の欄間細工は「鳳凰」。子孫繁栄の象徴です。
もう、室内を見ているだけで圧巻です。
注文
↑さてメニューが渡され、料理を注文。実は、あらかじめネットに掲載されていたメニューをチェックして、頼むものは決めていました。「おろしそば」(1050円)二枚、「季節の天ぷら」(1500円)一皿、「手作り豆腐」(630円)一つ。
↑熱々のおしぼりの次に運ばれてきたのは京都のほうじ茶。香ばしいです。
↑次に来たのはピッカピカのお盆。それと、箸、箸置き。この箸置きも特注品なのだそうです。どこまでもこだわりが光っていす。
手作り豆腐
↑そして来ました一品目! 京都の豆乳と四国のにがりで作られたという豆腐です。上に、おろし生姜がちょこんとのっています(チューブ入りのものではなく、本当のおろし生姜です)。
まあ、美味しい豆腐は食べたことがあるし、そのくらいなものかな……と思って口に入れたら、あれっ! なんだこれは!
見かけによらずとてもトロトロです。トロトロ系のプリンがありますが、あんな感じ。まるでデザートのようです。豆乳のふくよかな香りもかぐわしい~。
季節の天ぷら
↑次は「季節の天ぷら」。天つゆはこちらが言わずともちゃんと二人分持ってきてくださいました。
海老二匹と、あとは生椎茸、新ジャガイモ(小さくコロンとしたもの)、しそ、レンコンが一つずつ。
衣が薄く上品です。とってもサクサク。海老は驚くほどプリップリ。
外食の天ぷらというものは、今まで、私にとって鬼門でした。必ず胸焼けするのです。しかしここの天ぷらは胸焼けしなかった! 外食で胸焼けしなかった唯一の天ぷらとなりました。
おろしそば
↑次に、蕎麦のつゆと薬味が運ばれてきました。わさびはなんと生の、おろしわさびです! わさびだけでちょっと食べてみたら、とても爽やかで美味しかった!
↑いよいよ真打ち、蕎麦の登場です! そば粉(茨城県産:常陸秋そば)と小麦粉(群馬県産)が九対一の手打ち蕎麦です。
普通の蕎麦屋では薬味と蕎麦は一緒に来ますが、この店では懐石料理のようにバラバラに運ばれてくるのが面白いです。
シャキシャキ蕎麦
↑この蕎麦、細めに打ってあって、繊細な印象。シャキシャキと歯ごたえが良いです。よく噛んで蕎麦の香りを楽しみました。鎌倉一茶庵 丸山の蕎麦を彷彿させます。美味しい!
そして、蕎麦の下に敷いてあるすのこがお洒落! 目でも楽しめます。
最後にそば湯を飲んで、満足。食後、店員さんがほうじ茶を新しいものと替えてくださったので、それをすすって一服です。
感動
座り心地の良い椅子に深く腰掛け、足の下に畳のふかふかとした風合いを感じながら、細部にまで贅を尽くした室内を見回していると、言いしれぬ感動が襲ってきました。
私は、歴史のある立派な邸宅を見るのが好きで、朝倉彫塑館、江戸東京たてもの園、東京都庭園美術館、山手西洋館など、大学時代によく訪れていました。
しかしそれらの建物は、見学はできても、中で食事をとるなんて叶いません。ただ、「ああ、素敵だな~」と見て回るだけ。
それが、この「おかだ紅雪庭」では、普通だったら見学しか許されないような場所で、まるでそこの住人になったかのような気分で食事をとることができるのです!
なんという贅沢なんだろう。素晴らしい!
このような、建物を実際に使いながら保存する方法のことを動態保存というのだそうです。それにしても文化財的な建物を食事処にして生かすとは、たまげたセンスです。
次は、前日までの予約が必要な「昼御膳」(3000円)をぜひ食べに来たいです!(追記:後日、食べに行きました!↓)
憧れの1万2千円懐石
そしていつか……。夜の、1万2千円の懐石を……食べてみたいっ!
夜の懐石は1万2千円と1万6千円の二つのコースしかないそうで。このどちらかを頼むと、二階の特別室で食べられるのだそうです!
ド高い懐石を食べる人しか行けない謎の二階VIPルーム……(笑)。見てみたい……見てみたいぞーー!
というわけで新たな野望ができたので、それを達成するべく、少しずつお金を貯めようと思います。(追記:後日、1万2千円コースをいただきました!↓)
旭川市といえば旭山動物園が有名で、じゃあその他のおすすめスポットは? と聞かれると腕組みして「う~ん」とうなってしまう感じでしたが、このおかだ紅雪庭、お勧めです!
値段は高級ですが、普通なら個室料金が取られそうな素敵な部屋で食事ができて、料理も美味しく接客も頑張ってくださっている感じなので、「これならこの値段も……アリかな」と思えます。駐車場も広くて停めやすいですよ(ただし、舗装されていないので、雨の降った日などは足元の泥はねに注意)。
時間帯としては、私たちが行ったのは夜の7時半頃だったのですが、そのくらいだとお客さんも少なくて静かで良いですよ。