おかだ紅雪庭
2012年4月にオープンした蕎麦屋「おかだ紅雪庭」。
元々は、昭和8年に建築された酒蔵「北の誉」オーナーの自宅で、2012年12月には登録有形文化財にも登録されました。
そんな趣のある豪邸で食べるに似つかわしく、おかだ紅雪庭で出される蕎麦や料理は内容も値段も高級。
そして、その「高級」の極みが夜の「1万2千円」「1万6千円」の会席コース。
この会席を食べるときは、二階の「特別室」に案内されるという……。
その、選ばれし者のVIP待遇に憧れ、どんな素晴らしい料理が出るのか興味をそそられ、一度は食べてみたい!! と思っていた会席コース。
誕生祝いという名目で思い切って挑戦してみることにしました!
1万2千円
1万6千円はさすがに厳しいので1万2千円コースを予約。それでも十分高いっ。食事で一人1万2千円とはどういうことだ……米が何㎏買えるんだ……こんな贅沢は一生のうちに何度もできるものではない……。
その、一生に何回できるかわからない贅沢のうちの一回を費やすのだから、おかだ紅雪庭さん、頼みますよ!! と、期待とともに「失敗したくない」という緊張感も高まります。
↑玄関に入り、さあ、いざ「特別室」のある二階へ!!
↑階段を上り、突き当たりの部屋が「特別室」です。
意外と広くはない
↑わくわくしながら中に入ると……お……おおっ?
意外とこう……広々とはしていない印象。それに加え、絵や花は飾ってありますが、全体的にかなりさっぱりしているといいますか……。なんでも、この部屋、元は浴室だったのだそうで……。
浴室かあ……(苦笑)。風呂場で食事するって、なんだか変な気分。
もちろんきちっと改装してあるので風呂場の面影はないのですが、窓から見える庭も一階からの眺めの方が好みで、これだったら「特別室」より、一階の食事スペースの方が高級感があるかもなあ……なんて思ってしまいました。
板張りではなく畳敷きだったらもう少し印象が違ったかも?
二階から見た庭
↑特別室の窓辺に立ち、庭を見下ろすとこんな感じ。網戸越しなのでいまいちはっきりしない。
でも、隔離された個室で、厨房のガチャガチャした音も届かない中、静かに過ごせるのは良いですね。
大事な話し合いをしたいときなどにはうってつけかもしれません。
気を取り直して……。席に着き、食事が運ばれてくるのを待ちます。
白湯から
↑セッティングされていたお盆。
↑まず出されたのは白湯にぶぶあられを浮かべたもの。これで口をさっぱりとさせます。
↑女将さんが「まずは一献」と、杯に日本酒を注いでくださいました。私、生まれて初めての日本酒体験です。白ワインのようで美味しかったです!
↑熱々のほうじ番茶も出されます。
鴨肉と水菜
↑そして! 運ばれてきました「先付け」! 「鴨肉と水菜の和え物」です。
ミディアムレアに焼かれた柔らかい鴨肉に出汁がしみて、旨み抜群です。鴨肉がけっこうなボリューム。
白眉の椀物!
↑次は「糸瓜と帆立の椀物」です。
これ……!! これがですね、もう、とっても素晴らしかったです!!
料理に芸術を感じたのは初めてです。とぎすまされた出汁の風味に、木の芽の香りがスッと突き抜けていて、本当に繊細かつ美味!! さすが、招福楼の元料理長!(*注) これが本物の出汁というものなんだと感動しました。多分一生忘れられません。
(*注:この会席コースを食べに行った時点での料理長、齊藤弘文さんは、2013年に東京の銀座一期という料理店に移られました。齊藤さんの後には、京都の旅館美山荘で副料理長をなさっていた塩見直大さんが、おかだ紅雪庭の新しい料理長に就任されています。)
お造り
↑次は「ホッキ貝、甘エビのお造り、ズッキーニとラディッシュ添え」。
おかだ紅雪庭の庭で採れた「擬宝珠(ぎぼうし)」(葉っぱ)の上にお造りが綺麗に盛られています。擬宝珠の下には氷が敷き詰めてあってキンキンに冷えていますよ!
ホッキ貝も甘エビも新鮮!
ズッキーニはさっと火を通した上で塩がふられており、ちょっとした浅漬けのような感じです。
↑タレはしょうゆと梅肉の二種。刺身を梅肉につけて食べるというのもキリッとして美味しいものですね。
八寸
↑次に「八寸」。
・ゆでじゃがいものゴルゴンゾーラチーズのせ
・富良野産ゆでとうきび
・イチジクの胡麻ソースがけ
・長芋のゆかりがけ
・つぶの柔らか煮・スモークサーモンの玉ねぎ巻き
・もろきゅう
と、「じゃがいも」や「とうきび」で北海道らしさも感じられる、色とりどりで楽しめる内容でした。
特に「イチジクの胡麻ソースがけ」は個性的で美味しかった! 「イチジク」初体験でした。柔らかく甘いイチジクに、コクのある胡麻ソースが不思議と調和しているんですよね。
道産牛肉ステーキ
↑次は「焼き物」。なんと先付けの「鴨肉」に引き続いて肉第二弾、「道産牛肉の和風ステーキみょうがのせ」。
魚が出てくるかなと思いきや、再び肉が出てきたので驚きました。
サシなどは入っていない、赤身に近い肉なのですが、柔らかく、食べやすかったです。出汁に醤油を合わせたような、和風ソースが美味しさの決め手。肉を食べ終えてから、残ったソースを思わずすすってしまいました。酸味のきいたみょうががアクセント。
箸休め
↑次は「箸休め」の「じゅんさいとミニトマトの冷たい飲み物」。
レモネードのような味わいで美味しかったのですが、うかがったところ、「鰹と昆布の出汁に砂糖と酢とレモンを混ぜて作ってある」とのことでした。デザートのような、料理のような、不思議な一品です。
炊き合わせ
↑次は「賀茂なすと穴子の炊き合わせ」。
賀茂なすは素揚げしてあり、揚げ物を食べているような満足感を得られます。穴子はとっても柔らか。鰹だしがよくきいて美味しい!
盛り蕎麦
↑そして! メインの食事となります「盛り蕎麦」。
会席の食事として蕎麦が出てくるのがおかだ紅雪庭らしいところです。
シャキシャキお蕎麦に濃いつゆ、本わさび、ねぎ。もちろんとっても美味しいですよ!
デザート
↑ラストのデザートは「水ようかんと抹茶」。
この水ようかんには齊藤料理長の繊細な技が生きていて、液体と固体のぎりぎりをいっているその溶けるような口触りが最高です!
作り手の心
こうして、約二時間半をかけ、1万2千円会席コースは終了したのでした。
その後、誰の干渉もない特別室で、写真を撮ったりお茶を飲んだりしながらゆったりと三十分ほど過ごし、にこやかなお見送りを受けて帰りました。
憧れだった、おかだ紅雪庭の1万2千円会席コース。「料理から作り手の心が伝わってくる」とはこういうことをいうのかと思いました。ぜひ齊藤料理長に直接ご挨拶をしたかったのですが店員さんにそのことを言い出せず、結局齊藤料理長にはお会いできないまま終わってしまったのがちょっと心残りです。
↑食後に撮った室内写真。
一品一品、丁寧で、心のこもった料理を堪能できました。特に椀物のお出汁は絶品でした。
しかし、「鴨肉と牛肉」というダブル肉料理が出てきたのは予想外でした。予約時に「魚介類中心の献立で」とリクエストを出せば良かったかなと思っています。次回があればそうしようと思います。
それと、欲を言うならお造り! お造りは楽しみにしていたので、正直、「ホッキ貝と甘エビ」だけというのは残念でした。盛りつけはとても美しかったのですが! できればもう1種類、何か加えてほしかったなあ。マグロとか鯛とか……。