マクロビオティックの実践を進めていく中で、パンというものから遠ざかっていた。
パンは精白小麦粉の使用割合が多いし、作るときに砂糖も入れる。マクロビオティック的にあまり好ましいとは言えない食品だし、他にいくらでも食べるものはあるのだから執着することもない。
そう思い、夏場は毎日のように稼働させていたホームベーカリーを、秋口からぴたりと封印した。
パン屋でパンを久々に購入
けれど、パンというものにはご飯とは違う楽しさがあるのもまた事実。冷凍もできるから、手軽なおやつとしても重宝する。
それでも「精白小麦粉は避けた方がいいんじゃないか?」との心の声に制されて作らずにいたが、ある日、お腹が空いた状態でスーパーを歩いていたときにパン屋からの香ばしい匂いに引き寄せられて立ち寄り、「道産小麦粉使用」という言葉につられて食パンを買ってしまった。
その白く、柔らかな食パンは、道産小麦とは言え精白小麦粉率100%で、入れられているのは精白糖。マーガリンとジャムを塗って食べたら久しぶりに美味しかったが、「こんなものを買って食べるくらいならうちで作った方がマシなのでは」とひしひしと感じた。
全粒粉パンへの挑戦
そこでホームベーカリーの埃を払い、再稼働させることを決めた。
だが、ただ以前のように白いパンを作るのでは成長がない。全粒粉のパンを焼いてみよう。
全粒粉入りのパンは作ったことがあったが、使っていたのは小麦粉全体の10%ほど。そうしなければうまく膨らまないという印象があった。しかし今回は挑戦してみたいのだ。全粒粉100%のパンに。
国産小麦というだけでも外国産小麦より膨らみにくいと言われているのに、国産の、しかも全粒粉100%で焼いたら一体どうなるのか……。まったく膨らまなくて、ダンゴのようになるかもしれない。それでもいい。ダンゴ、どんと来いだ。
300gの全粒粉
↑生種(ホシノ天然酵母から作成)を入れたパンケースに、意を決して全粒粉を入れていく。その量300g。
↑紛れもなく100%全粒粉使用。米で言うところの「ぬか層」にあたる「フスマ」がたっぷり。茶色いつぶつぶだらけだ。
水と塩、甜菜糖、油を入れ、フタを閉め、「天然酵母のパン生地コース」をセットして完了。
生種…約25g(付属の大スプーン2)
完全粉…300g
紅花油…10g
甜菜糖…17g(付属の大スプーン2)
水…160ml
生地ができあがる(一次発酵が完了する)のは四時間後。失敗覚悟とは言いながら、もしかしてうまくいっちゃうかもなんて期待もある。いや、その期待の方が大きかったのだが……。
パン生地完成。ざらざらで弾力無し
↑四時間経ち、パンケースから生地を取り出した。全粒粉100パーセントなのだから当然と言えば当然だが、ざらざらしていて滑らかさがない。白パンの生地のように、押して「ポニョッ」という感触を楽しむこともできない。あくまでも質実剛健……。
いや、こんな無骨な風情でも、焼いてみたらそれなりになんとかなるのでは? 一抹の不安を覚えながらも、二次発酵(オーブンの発酵機能を使って1時間)を済ませてオーブンに入れた(生地がゆるすぎて分割も成形もできなかった)。
(180度に余熱したオーブンで15分焼いた。)
ゴツゴツの焼き上がり。中はねっちょり。
↑だが、その期待は宙に儚く散った。何、これ? 断面はぼそぼそ。「ふわっ」の「ふ」の字もない。しかも、焼いた時間が足りなかったのか、微妙にねっちょりしている。見事にダンゴ。
噛むとすぐ口の中でドロドロになった。妙にしょっぱいし、匂いも変わっている。
せっかく何時間もかけて作ったというのに。300gも全粒粉を使ったのに。心の中にかすかな苛立ちと悲しみが流れていく。どうすりゃいいんだ。このままではとても食べられない。
ねっちょり感をなくすため、オーブンで20分ほど焼き足すと、どうにか湿り気はなくなった。だが、ガリガリして、お世辞にも美味しいとは言えない……。
栄養は満点なのだが
栄養は満点なのだ。「母をたずねて三千里」の主人公、少年マルコが、旅の途中に食べるパンとしては最適なのじゃないかと考えたりした。彼はほとんど、道中で人に分けてもらったパンと牛乳だけで生きているようだったから。この全粒粉パンなら、白パンよりも元気にアルゼンチンへ向かえるだろう……。
捨てるわけにもいかず、私はその「旅人のパン」を噛みしめた。今回は失敗だ。当初の予想通りというか、あまりにも想像した「失敗」のパターンそのものだ。やはり全粒粉100%のパンは難しいのか……。
全粒粉の割合を減らして再挑戦
しかし諦めたわけではない。粉の配合や発酵時間を調整することで、きっとパンらしくなっていくはず。試行錯誤というのが、マクロビオティック実践にはどうしても必要なのだ。実験あるのみ。
失敗の痛手から立ち直り、私は今日、二度目の全粒粉パンに挑戦している。精白小麦粉(強力粉)2:全粒粉1の割合だ。これでも、当初の精白小麦粉9:全粒粉1からすれば大幅な全粒粉量アップだ。
またダンゴになるかもしれない。それも仕方ない。少しずつでも理想に近づいて、いつかこのサイトで「全粒粉パンがうまく焼けた!」と報告できたらいいなと思う。
【2008.12.22 23:45追記】
強力粉:全粒粉=2:1のパンはとてもうまく焼けた! 二時発酵に入る前のベンチタイムを無駄に二時間ほど取ったのが勝因か。
次回は強力粉:全粒粉=1:1に挑戦するつもり。そして限りなく全粒粉の割合を増やしていき、いつか全粒粉100%を成功させたい!
追記:全粒粉100%の丸パン、ついに成功
2019年追記:11年ぶりに全粒粉100%パンに挑戦し、ついに上手く焼き上げることができた。使う全粒粉を、タンパク質含有量の高い(=練ったときにグルテンが形成されやすく膨らみやすい)もの(「オーサワ 北米産 有機全粒粉 強力粉」)にしたのが功を奏したようだ。↓
そのときの様子を記録した記事はこちら。↓