久司道夫著「マクロビオティック健康法」には簡単な食養レシピが掲載されている。
中でも興味を引かれたのが「干し大根、シイタケ、アズキのスープ」というもの。「腎臓に溜まった脂を落とす効果」があるという。
材料の組み合わせも面白いし、いかにも体がすっきりしそうだ。ぜひ作ってみたい。
だがそのレシピを見て、私は考え込んでしまった。「干し大根3、アズキ2、干しシイタケ1の割合であわせ、四倍から五倍量の水を加えて25分から30分煮出します」とあるが、小豆が30分やそこらで柔らかくなるだろうか?
三つの材料の割合は重量比だろうか、体積比だろうか? 切り干し大根は水に戻してから計るのだろうか? 干し椎茸は?
インターネットで探しても、このスープのレシピは見つからない。曖昧すぎて、皆もお手上げなのだろうか? これはもう、自分で考えてやってみるしかない。私はとりあえず、「乾燥状態の切り干し大根30g、小豆20g、水で戻した干し椎茸10g」という材料で作ってみることに決めた。
まず、小さな鍋に小豆を入れ、小豆の4倍量である80ccの水を注ぎ(小豆は通常、4倍量の水で煮る)、途中で差し水をしながら30分ゆでる。その後、さっと水洗いして1㎝に切った干し大根と、みじん切りにした干し椎茸を加え、全材料の5倍量である250ccの水を注ぎ足してさらに弱火で煮る。
……案の定、切り干し大根が水を吸ってどんどん膨らんでいく。スープではなくただの切り干し大根の煮付けのようになってきたので、水をさらに60cc足す。もうこれ以上見ているのが怖い。私は鍋にフタをして、キッチンタイマーを30分にセットしてその場を離れた。
30分後。鍋の中は、どう見ても切り干し大根の煮付け。どこにスープがあるのか……と思いながらも、お玉で切り干し大根を押さえて、絞り出すようにエキスを器に注ぐ。
抽出された汁はどこまでも茶色い。濁った醤油のようだ。……これで良かったのか? 疑念が頭の中で渦を巻く。私はその汁を少し取り皿に分け、すすってみた。うっすらとした甘みと、切り干し大根の深い苦み……。スープというより漢方の薬のようだ。濃すぎて、軽く頭が痛くなってくる。
……どうも成功した気がしない! うまくいったらサイトのレシピコーナーに載せようと思っていたけれど、タンマ! この汁は、明日の味噌汁のダシにでも使おう。
そう決めて、私は台所の鍋の元に赴いた。エキスを搾り取られた具がこんもりと残っている。これをどうにかしなければ。
鍋を火にかけ、ごま油で具を炒めてから、だし汁大さじ1と醤油大さじ2を加えて混ぜ、「即席切り干し大根の煮物」に仕立てた。
この煮物が意外と美味しくできたのがせめてもの慰めとなった。
ちなみに、後日入手して読んだ「THEマクロビオティック」にも似たようなスープのレシピが載っていて、それでは切り干し大根は水で戻してから計ることになっていた。ええ~っ、マクロビオティックでは乾物を水で戻さないのが通説っぽいから、乾燥状態で計ったのに~!
水で戻して30gと、乾燥状態で30gって大違いだよ! どうりで鍋が切り干し大根の山になるはずだよ!
……というわけで、一度目はうまくいかなかった「干し大根、シイタケ、アズキのスープ」。リベンジがある……かもしれない??
(2008.10.29追記:リベンジ完了! 今度は切り干し大根を戻してから計った。色も味も改善された。『干し大根、シイタケ、アズキのスープのレシピ』はこちら。)