物理的にマクロビオティックを実践する時間がありません。
時間がない
マクロビオティックが体に良いであろうことは十分わかった。実行もしたい。けれど、仕事が忙しく、料理に構っていられる時間がない……。
現代社会において、このように、マクロビオティックに関心を持ちながらも仕事に忙殺され、実践が難しいと感じている方も少なくないと思います。
「自炊するだけでもいいんだよ」と言われても、「その、自炊すらできないんだ」という方もおられるのではないでしょうか。
パティシエである私の妹がそんな生活を送っています。朝の五時に起き、夜の十時に帰ってくるという毎日で、休みは週に一度。
野菜一つ買おうにも、家に帰る頃には店が閉まっている。休みの日は、動くことすら億劫。
料理が好きで、学生時代は毎日手作りのひじき煮や筑前煮を入れた弁当を持って行っていた妹が、今は「面倒だから火を使いたくない」と火すら拒否するようになってしまいました。
多忙の中でもできること
妹のような状態では、マクロビオティックの実践は不可能にも思えます。
しかし、マクロビオティックというのは、「いつでもどこでも誰にでも」実行できるもののはずです。時間に余裕のある人だけの趣味にしてしまってはいけません。
では、玄米を水に浸ける気力すらない人ができるマクロビオティックとは何か?
それは、「よく噛むこと」と、「少しでも害の少ないものを選ぶ」ことです。
外食しかできないのなら、蕎麦屋や和食のレストランなど、なるべく野菜や穀物を多く食べられる店を選びましょう。肉よりは魚、外国産よりは国産です。
コンビニで弁当を買うしかないのなら、少しでも添加物の少ないものを探しましょう。
それを選ぶ自由すらないときは、与えられた食事を、よく噛んで食べましょう。
一口につき50回から100回、噛んで噛んで、唾液と混ぜてドロドロにしてから飲み込むのです。
よく噛むことはマクロビオティックの最重要事項の一つです。それを心がけるだけでもマクロビオティックを実践していると言えると思います。
可能であれば休みの日に作り溜め
そして、可能であれば、休みの日にでも米(玄米が大変であれば胚芽米か、それも手に入らなければ国産の白米でも良いです)を炊き、冷凍保存しておきましょう。
余裕があれば煮物などを作り、タッパーに入れて冷蔵庫に入れます。そうすれば一週間はもちます。
無理なら良いのです。ほんの少しでもやる気のあるときに、できる範囲でやってみましょう。
大切なのは「食の知識」を持つこと
時間がないからと言って、マクロビオティックを諦めるのはもったいないです。
マクロビオティックと言ったって、特別なことをする必要はありません。陰とか陽とかもありますが、無視したって良いです(時間と興味があれば、勉強してみると面白いとは思います)。
要は、一般的な食の知識を持つことが大事なのです。たとえば、ポストハーベストのこと。収穫後にかけられる農薬で、外国から輸入された農産物に残留しています。
知らずに食べているので一番多いのは小麦ではないでしょうか。市販のパン、ケーキ、ハンバーガーのバンズ、ピザ、カップ麺、パスタなど、国産小麦使用と明記されていない限り外国産小麦が使われている場合がほとんどでしょう。
輸入小麦からはクロルピリホスやマラチオンといった、ごく微量でも人体に害のある(中枢神経を侵す)殺虫剤が検出されています(*1)。完全に避けることは難しくても、そのような事実を知ることで行動が変わってきます。
柑橘類にかけられる防カビ剤で催奇形性のあるOPP,TBZにも注意しましょう。
そして、添加物のこと。特に毒性が強い、保存料の「ソルビン酸」、「ソルビン酸K(カリウム)」、「安息香酸」、「安息香酸ナトリウム」、発色剤の「亜硝酸ナトリウム」は避けるようにしましょう。
そのような、ほんの少しずつの積み重ねが、のちのちの健康状態に大きな違いをもたらすのです。忙しいのだからマクロビオティックなんてできっこないと投げやりにならず、ほんの少しでも良いものを選ぼうという意識を持つことでご自分の健康を守っていただきたいと思います。
(食材の選び方について詳しくは実践編『何から始める? その3食材を変える(有機栽培、国産、無添加)』参照)
次項:マクロビオティック、桜沢氏と久司氏の違い
次項『桜沢如一氏と久司道夫氏、教えの違いは?~前編』では、マクロビオティック創始者の桜沢氏と「クシマクロビオティック」で現代的なマクロビオティックを展開なさる久司氏の教えの違いを見ていきます。