なぜ未精製の穀物を主食とするのか?…一物全体
穀物=陰陽のバランスがとれ、良質のエネルギー源
マクロビオティックでは、主食を玄米に代表される「未精製の穀物」とすることを理想としています。
穀物は約90%がデンプンで構成され、体内でブドウ糖(炭水化物)になります。炭水化物は三大栄養素の一つで、人間にとって重要なエネルギー源です。
マクロビオティックでは「食事全体の60%以上を主食とする」としており、日本の厚生労働省も炭水化物の食事摂取基準を「50%以上70%未満」(*1)と定めています。
つまり、東洋医学的にも現代栄養学的にも、主食(穀物)は食事の過半数を占めるべき大事なものとされているのです。
中でも玄米は、あらゆる食物のなかでももっとも「中庸」(陰陽のバランスがとれている)とされ、マクロビオティックの要とも言える存在です。(参考…マクロビオティックQ&A理論編『食物の陰陽』)
ではなぜ白米ではなく玄米=未精製が良いのでしょうか? その理由を探っていきます。
未精製=元々備わっているパワーを生かす
玄米とは、まったく精白していない「米の種子」のことです。将来、イネの根や芽になる「命の源」が詰まっているのが「胚芽」です。
この胚芽は果皮、種皮に守られ、胚盤を通して胚乳からエネルギーを受け取って発芽します(このとき、糊粉層にある酵素が、胚乳のデンプンをブドウ糖に変えて、エネルギーとして使いやすい形にします)。
つまり玄米は、その一粒の中に、発芽に必要なすべてを備えているのです。一粒で完全なのです。削ってしまえば生命力は落ち、胚芽まで失えば米種子としての命は完全に断たれます。
ビタミンB1が糖質を代謝
また、胚芽に含まれるビタミンB1は、体内でデンプン(ブドウ糖*)をエネルギー源に代謝するのに必要です。
胚芽を削った白米だと、デンプン(ブドウ糖)をエネルギー源に代謝するために、他の食材からビタミンB1を調達しなければいけません。
もしビタミンB1を含む他の食材を摂っていない場合は、自分の体の中にあるビタミンB1を使います。それが過ぎるとビタミンB1欠乏症となって、脚気の原因ともなります。
最初から玄米で食べていれば、他に何を食べ足さなくても、玄米のデンプン(ブドウ糖)が玄米自身によって体内でエネルギーに変換されるのです。玄米は、削らない方が自然だし、お得とも言えるのです。
*デンプンは、唾液や膵液に含まれるアミラーゼによって麦芽糖(ブドウ糖)になります。)
一番自然で、バランスも良い
欠けのない、生命力がみなぎった形で食べるのが、栄養の面からも陰陽バランスの面からも一番良い。それが、一物全体(いちぶつぜんたい)という考え方です。一つの物の全体を食べようということです。
玄米は、この一物全体の考え方に最も沿った食べ物の一つなのです。
一物全体の注意点
一物全体は、他の食べ物でもなるべく実行するのが好ましいです。たとえば、野菜の皮は剥かず、葉も利用します。野菜の葉っぱで有名なのは大根葉ですよね。煮浸しなどにすると香ばしく、とても美味しいです(参考レシピ…「大根の葉と油揚げの煮浸し」)。
皮も葉もすべて食材として利用できるなら、ゴミも減りますし、調理も楽ですし、家計も助かりますよね。
ただ、注意しなければいけない点もあります。一物全体は「無農薬で汚染が少ない食材であること」が前提の考え方なので、農薬がかかった野菜の場合は皮を剥きましょう。
また、一物全体にこだわりすぎる必要もありません。通常、スーパーで売られている野菜は葉が切られていることが多いですから、そんなときは実だけを利用します。食べにくい部位(ゴボウや大根の先端部分など)も、無理に食べる必要はありません。ご自分のできる範囲で、なるべく一物全体食を心がけてみてください。
食事の中心となる「米」だけは、一物全体(玄米)にこだわりたいところではあります。玄米が難しければ、分つき米か、胚芽米が良いでしょう。
次項:マクロビオティックの本質に迫る
次から、マクロビオティック理論の要である「無双原理」について、一度食から離れ、人生哲学としての観点から掘り下げていきます。マクロビオティックのより深い理解にもつながりますよ。
「無双原理で楽しく生きる? その1-陰あれば陽、苦あれば楽」からスタートします。