マクロビオティックとは? その2「陰陽の考え方-無双原理・陰陽の特徴」
万有無双原理
「宇宙万物は、陰陽より成る」。
これはマクロビオティック創始者の桜沢如一(さくらざわゆきかず)氏の言葉で、「万有無双原理」というものですが、「宇宙すべてのものが陰陽からできている」と聞いてみなさんはどうお感じになるでしょうか?
この無双原理が、マクロビオティックを理解する上での要になっていきます。
陰にも陽にも偏りすぎず、ちょうど調和のとれた状態を目指すのがマクロビオティックだからです。そのため、何が「陰」で何が「陽」か、あるていど理解していなければいけません。
マクロビオティックを自分で考えて実行できるようになるため、ぜひここで学んでいってください。
何が「陰」で何が「陽」か?
どんなものが「陰」で、どんなものが「陽」か……。何も聞かなくても、なんとなくイメージを持たれると思います。そしてそのイメージは、大体正しいのです。
たとえば色の「紫」と「赤」なら、どちらが陰でどちらが陽だと思いますか?
次の行を見る前に自分の中で答えを出してみてください。
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……正解は、陰が「紫」、陽が「赤」です。多くの方が正しく判断できたのではないでしょうか? このように、陰・陽の見分け方は、私たちの感覚に根付いているものと言えます。
詳しく解説すると、「陰」は、7色スペクトルの白、青、藍、紫。冷たく、暗く、静謐で、湿っている(水分が多い)。
軽重では「軽」、形態は「ガス体」、長短では「長」、太い細いでは「細い」、高音低音では「高音」、上昇下降では「上昇」。性別的には「女性」。性格的には陰気、優しい。心理的には「哀しみ」、四元素で言えば「風」。
味は「辛い、酸っぱい」、物理的には遠心力(中央から外側に向かう力)を意味しています。
陰陽指標ではK/Naが5以上だと基本的に陰とされます。(K=カリウム、Na=ナトリウム)
「陽」はその逆です。7色スペクトルの黄、橙、赤。温かく、明るく、活動的で、乾いている(水分が少ない)。
軽重では「重」、形態は「硬体」、長短では「短」、太い細いでは「太い」、高音低音では「低音」、上昇下降では「下降」、形は「丸い」。性別的には「男性」。性格的には陽気、攻撃的。心理的には「怒り」、四元素で言えば「火」。
味は「塩辛い、苦い」、物理的には求心力(外側から中央へ向かう力)を意味しています。
陰陽指標ではK/Naが5以下だと基本的に陽とされます。
以上のことを陰陽分類表として一覧にまとめてみます。(*3)
この見分け方を用いれば、どんな物でも陰陽の判断をつけられるようになります。なお、味において、中庸は「甘い」ということになっていますが、この甘さというのは砂糖の甘さではなく、ご飯をずっと噛んでいたら感じる甘さや、時間をかけてニンジンを蒸したときに感じる甘さなど、多糖類の甘さを意味しています。
陰陽は相対的
ただし、絶対的な「陰」、「陽」というものはありません。陰性なものの中にも陽性な部分はあるし、その逆もまたしかりです。
たとえば「北海道」は冷涼な気候なので「沖縄より陰性」と言えますが、「アラスカより陽性」とも言えます。
また、同じ北海道でも、冬は「陰性」ですし夏は「陽性」です。
このように、陰性、陽性は「絶対的なもの」ではなく、比べるものに応じて変化する「相対的なもの」で、「陰陽の中にもさらに陰陽がある」と理解しておく必要があります。
判断の決め手となるもの
何か一つのものを見て陰陽を判断しようと思ったとき、まずどんなことからチェックしていくべきか?
『まず視覚によるものが容易であり、正確だと思われる。次に、触覚、味覚であろう。(略)視覚による陰陽の判別は、色によると最も便利である。すなわち、赤が陽、青、紫が陰である』(*1)
つまり、まず色で判別するのが良いというわけです。たとえば青空と夕焼け空なら、青空は青いから陰、夕焼け空は赤いから陽と言えますね。
ただ、たとえ色が陽性でもその他の要素から食品としては極陰と判断されるもの(トマトなど)がありますから注意が必要です。(参考:理論編「食物の陰陽判断」)
人間は陰か陽か?
それではここで問題です。植物に対して人間は陰でしょうか陽でしょうか? 次の行を見る前に少し考えてみてください。
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……正解は、「陽」です。まず、肌の色が、人種間の差こそあれ陽寄りです。そして血の色も赤で「陽」。血の味も塩からいので「陽」です。体温も高いので「陽」、活発に動きもするので「陽」ですね。
それでは植物はどうでしょうか?
植物は緑で、上に伸び(上昇)、冷たく、静かで、薄い葉を持っています。これらの条件を考えると、植物は人間に比べ陰性ということになります。
陽は陰と相補う関係です。つまり、陽性である人間は、陰性である植物を食べることでバランスが取れるようになっているのです。
人間が陽性、植物が陰性
人間と植物を比べたとき、人間は陽性で、植物が陰性である。ここは非常に大切です。
マクロビオティックが植物食である根拠がここにあるのです。
シーソーを思い浮かべてみてください。片方(陽極)には人間が座っています。このシーソーを水平にするには、もう片方(陰極)に誰かを座らせる必要がありますね? 植物(陰性)が座れば、ちょうど釣り合いが取れるのです。
このように、人間には、バランスを取るために植物が食べ物として最もふさわしいのです。
では動物はどうでしょうか?
動物(肉、魚)は、植物と比べたとき、人間と同じ陽性です。だから、シーソーに乗るとしたら、人間と同じ陽極に座ることになります。ということは、人間が動物を食べたらどうなるか?
シーソーが陽極に大きく傾いて、バランスがすっかり崩れてしまうのです。
人間(動物)に比べ、植物は陰性である。だから、人間は動物よりも、植物を食べた方がバランスが取れる。
この考え方を忘れないようにしてください。この大前提を元に、マクロビオティックでは食べ物を植物性のものの中から選びます。
ただ、いかに植物と言えども、体重が重すぎて(陰性が強すぎて)、日本のように穏やかな気候に住む人間(陽性)と一緒のシーソーに乗ったときに水平にならず、植物(陰性)の方へ傾いてしまうものもあります。それも良くないので避ける必要があります。
具体的にはバナナやパパイヤ、マンゴーなどの熱帯性果物、トマトやナス、ジャガイモなどのナス科の植物などですが、詳しくは次項で見ていきましょう。
次項:陰陽判定基礎クイズ
ここまで、万物には陰陽があり、陽性である人間は陰性である植物を食べることでバランスがとれることを確認しました。
次項『マクロビオティック陰陽理解度をチェック! 陰陽判定基礎クイズ(全5問)』で、今回学んだことが理解できているか、チェックしてみましょう。ヒントを活用しながら全問正解を目指してみてください!
(クイズを飛ばして次を学びたい方は「食物の陰陽判断(見た目、収穫時期、種類、味付け、調理法)~マクロビオティックとは? その3」に進んでください。)