なぜ白砂糖が好ましくないのか?
砂糖がダメという衝撃
マクロビオティックを本格的に勉強し始めて、一番驚いたのがこれでした。「砂糖をとってはいけない」。
それまでも、砂糖が体に良いとは思っていませんでした。カロリーが高くて太るし、カルシウムを溶かすし、栄養があるわけではないし。けれど、思い当たる害悪といえばそのくらいで、「白砂糖は食べてはいけない!」というほどの強い拒否感は持っていませんでした。
ですから、平気で白砂糖入りのチョコレートを食べていましたし、ケーキも、アイスクリームも、おやきも、「太っちゃうかなあ」と少し気にする程度で、週に2~3度は口にしていたように思います。
市販の甘いお菓子で、白砂糖を使っていないものなんて皆無に等しいですからね。はなから諦めているというか、気にもしていませんでした。
だからこそ、マクロビオティックで「白砂糖はダメ!」と強烈に言われたとき(桜沢如一氏(マクロビオティック創始者)が一番危機感を抱いているのは「白砂糖」だと、本を読んでいて感じます。何度も出てきます)、「えっ、そんなにダメなものなの? ど……どうして?」と戸惑い、今までたくさん白砂糖入り菓子を食べてきた自分を正当化したいような思いもはたらき、いくぶん反発心も抱きました。
「なぜ砂糖がそんなにいけないの?」……この疑問に、私は何ヶ月もかけて取り組んでいくことになります。
白砂糖がいけない5つの根拠
砂糖がダメとはよく出てくるけれど、その根拠についてはなかなか探すのが難しいです。けれど色々と桜沢氏や久司氏の本を読み、理由を書いてある箇所を見つけました。
以下に引用します。
(引用:理由*1,*2,*3:桜沢如一著 『東洋医学の哲学』p.39,151
理由*4,*5:久司道夫著『久司道夫のマクロビオティック入門編』p.27~30)
)
(筆者註:△=陽性。K=カリウム、Na=ナトリウム。K/Na=5以上だと陰性とされる。つまりK/Naの函数がベラ棒に多いとは、極めて陰性であるということ)
『砂糖の主成分であるショ糖は二糖類ですから簡単に切り離されて単糖になりますので、食べるとすぐに血糖値が上がるわけです。(略)血糖値が上がると、気分がすぐに高揚するのです。でも、(略)一時間もすると血糖値が下がっていきます。』
『血糖値を頻繁に上げ下げしていると、インシュリンを出しているすい臓が弱ってきてしまいます。すると、(略)糖尿病になるのです。』(*4)
『砂糖を取りすぎると(略)ビタミンBグループ欠乏症になることもあります。ビタミンBグループが足りなくなると、脳細胞が正常な反応をできなくなってしまいます。そのため(略)人の判断がおかしくなりやすいわけです。』(*5)
(筆者註:砂糖(ショ糖=ブドウ糖+フルクトース)を体内でエネルギー源として代謝するのにはビタミンB1、ビタミンB2が必要となります。ですが砂糖にはビタミンB群が入っていないため、そのまま摂ると体内のビタミンB群を消費することになり、ビタミンB群不足になるのです。
ビタミンB群が不足すると、疲れやすくなったり、肩が凝ったり、脚気の原因ともなります。)
砂糖の害…実体験を通して
上記の理由を目にし、頭では「白砂糖の害」を理解しました。けれど完全に腑に落ちるところまでは行かず……。そこで、今までは無意識に食べていた菓子類を「これには白砂糖が入っている」と意識して食べてみることに。
すると、白砂糖が入っているものを食べたとき特有の反応があることに気づきました。
白砂糖を摂取すると、鼻水が出て、寒気がし、くしゃみがとまらなくなり、風邪っぽくなるんですね。ぼーっとして、体を動かすのがだるくなります。これらはまさに「極陰」の症状と言えます。
白砂糖入りの菓子を食べて、様子を見て……という実験を繰り返しているうちに、「そうかそうか。確かに白砂糖って良くないね」と体でわかってきました。こうなってくると、特に「白砂糖が入ってるから食べられないっ! 我慢しなきゃダメ!」なんて悲壮感を漂わせずとも、自然に白砂糖を好まなくなってきます。
使っても良い甘味料
白砂糖がダメというなら、他の砂糖はどうなのだ? マクロビオティックをやると、一生砂糖が食べられないのか?? そんな馬鹿な!
……と、最初思いました。けれどそれは私の勘違い。桜沢如一氏は、禁忌の対象をあくまでも「精製した白砂糖」に絞っておられます。
『今日の化学的・工業的生産物である砂糖はミネラル、蛋白質、脂肪、ビタミンなどわれわれの生命力を支えるのに必要なものを含んでいた昔の砂糖、自然の砂糖では決してありません。』
(桜沢如一著 『東洋医学の哲学』p.39)
つまり、昔ながらの自然な砂糖なら良いわけです。
マクロビオティックでは、精製していない黒砂糖、甜菜糖、米飴、メープルシロップなどが甘味料として推奨されています。ちなみに我が家では、サトウキビ汁を漉して煮詰めて乾燥させただけの古式原糖を使っています。
ただ、自然の甘味料も陰性が強いことには変わりありませんので、できるだけ控えめにする心がけは必要です。
甜菜糖(ビート糖)と黒砂糖(キビ糖)について
(2008.11.12追記)
最近のマクロビオティック実践者の間では、黒砂糖ではなく甜菜糖を使う方が良いというムードが流れているように感じます。その理由は、甜菜糖の方が黒砂糖よりも「陽性」で、砂糖としての極陰性の害を最小限にとどめられるというところにあります。
なぜ甜菜糖が黒砂糖より陽性なのかと言えば、甜菜糖の原料である「砂糖大根」が北海道で採れるからです。ひるがえって、黒砂糖の原料であるサトウキビは南で育ちます。「北で育つ植物は陽性」「南で育つ植物は陰性」の理論を当てはめているわけです。
また、甜菜糖にはビフィズス菌を増やすオリゴ糖が含まれているというのも甜菜糖が好まれる理由の一つでしょう。
ですが、私自身、「甜菜糖を黒砂糖より支持する」という気にはなれません。別に、黒砂糖でも良いのではないか? と思っています。
確かに甜菜糖は育つ場所の陰性陽性で言えば黒砂糖に比べ陽性ですし、オリゴ糖も含まれてはいます。
ですが、成分から言うとその85%は「ショ糖」(グルコース+フルクトースの二糖類。代謝にビタミンB群が必要)で、オリゴ糖は5%にとどまります。黒砂糖のショ糖は80%です。上白糖は97.8%。(*1)
陰陽の観点から言えば甜菜糖の方が安心と言えるかもしれないのですが、成分から言えば黒砂糖の方がずっとカルシウム含有量が多かったりするので(100g中240mg。甜菜糖のカルシウム含有量は100g中0~1mg)(*2)、どちらが良いとはっきり断言できない感じがあります。
それに、桜沢氏も久司氏も、白砂糖に代わる自然な糖類の中に「黒砂糖」を入れておられます。(*3)
そもそも、そこまで砂糖の種類を気にするのであれば、甘みはすべて米やニンジン、かぼちゃ、玉ネギなどから調達すれば良いわけです。それが、甜菜糖より、黒砂糖より、一番安全です。
陰陽をあまりにも突き詰めて考えると本当にキリがありません。「未精製の糖類なら白砂糖よりよほどマシ」くらいのとらえ方で、あとは用途や好みに合わせて選べば良いのではないかと思います。(あっさりさせたいなら甜菜糖、独特の香りが欲しいなら黒砂糖、テリを出したいなら米飴、など。)
色々な自然甘味料を買い集めて、自分はどれが好きなのか実験してみるのも面白いと思います。
次項:肉を食べない方が良い理由
次の項目(なぜ肉を食べない方が良いのか?)では、マクロビオティックにおける肉食の解釈について説明します。