何から始める? その1~玄米に挑戦:その栄養と排毒効果は?
マクロビオティックと言えば玄米
『<穀物>は常に食事の基本として用いる。食事全体のもっとも多い量----少なくとも六十パーセントは<穀物>にする。』(*1)と言われるほど、穀物はマクロビオティックには欠かせないものです。
主食にできる穀物としてあげられるのは全粒(未精製)の米(玄米)、ソバ、小麦、トウモロコシなどがありますが、中でも玄米は一番基本的で重要なものです。
マクロビオティックと言えば、まず玄米とも言えるほどです。(そのパワーや栄養素などについては後述します)
ですから、マクロビオティックを始める際、一番初めに実行したいのが白米食だったところを玄米食に変えることです。
玄米とはいえ一皮むけば白米なわけですから、白米食に比べて食感や食味的にそう変化があるわけでもないので、無理なく食生活に取り入れられると思います。
いきなり玄米100%に抵抗のある方は、3合のうち1合だけ玄米にするところからスタートなさると良いと思います。私も、最初は玄米100%を実行する勇気が出ず(玄米って美味しくないというイメージがあったので)、「胚芽米2合、玄米1合」から始めました。
そして、「あ、意外と大丈夫だな」と思えてから徐々に玄米の割合を増やしていき、現在は100%玄米で炊いています。
ただし、やはり玄米だけだとぬかの匂いが気になる場合もあるので、炊くときと食べるときに一工夫をします。詳しくは次ページ「玄米の美味しい炊き方は?」で説明します。
玄米とは? その栄養
↑玄米とは籾殻を取り除いただけの米のことで、精白米では削り取られてしまっている命の源、ぬか層、胚芽が残っています。
おかげで精白米に比べ、
・マグネシウム(糖質や脂質からエネルギーを作る)は約5倍
・鉄分(赤血球に取り込まれて酸素を体中に運ぶ)は約2.5倍
・ビタミンE(老化防止。筋肉の萎縮を防ぐ)は12倍
・ビタミンB1(糖質代謝、消化液の分泌を促進)は5倍
・ビタミンB2(炭水化物、糖質、たんぱく質を代謝)は2倍
・ビタミンB6(たんぱく質、必須脂肪酸代謝。皮膚の健康維持)は約4倍
・食物繊維(便通を良くする。大腸ガン予防)は6倍
成分名 | 玄米 | 精白米 |
---|---|---|
エネルギー(kcal) | 348 | 355 |
たんぱく質(g) | 10.0 | 9.2 |
脂質(g) | 2.7 | 0.9 |
炭水化物(g) | 70.6 | 74.0 |
カルシウム(mg) | 9 約2倍 |
5 |
マグネシウム(mg) | 110 約5倍 |
23 |
鉄(mg) | 2.1 約2.5倍 |
0.8 |
E(mg) | 1.2 約12倍 |
0.1 |
B1(mg) | 0.41 約5倍 |
0.08 |
B2(mg) | 0.04 2倍 |
0.02 |
B6(mg) | 0.45 約4倍 |
0.12 |
食物繊維(g) | 3.0 6倍 |
0.5 |
と、非常に栄養価が高くなっています。頼れる、優秀なエネルギー源、たんぱく源です!
米は、その90%がデンプンでできていますが、そのデンプン(ブドウ糖*)をエネルギー源に変えるとき、「ビタミンB1」が必要になります。(*デンプンは、唾液や膵液に含まれるアミラーゼによって麦芽糖(ブドウ糖)になります)
そのビタミンB1は主に胚芽に含まれています。ですから、米をエネルギー源として効率よく使うためには、玄米で食べるのがお得なのです。もし胚芽を削った米を食べるとすると、糖をエネルギーに代謝するためのビタミンB1を、他の食物から摂らなければいけません。それはなかなか大変です。
最初からついているものを利用する方が楽ではありませんか?
玄米さえたっぷり食べれば、あとは少しの野菜や海藻を補うだけで十分健康に生きていけるのです(まさに宮沢賢治「雨にも負けず」の世界)。主食の王様にふさわしいですね。
ダイオキシンを吸着!
ダイオキシンとは環境ホルモン(内分泌攪乱(かくらん)化学物質。その作用が動物のみならず人間本来の生理機能(内分泌活動)をかく乱させ、肉体にも精神的にも悪影響を及ぼしてしまう)の代表格で、『毒性の強さから史上最悪の有害物質』(*2)と言われているものです。発ガン性や生殖毒性(生殖器や胎児への毒性)が認められています。
ダイオキシンが体内に入る経路は「食品から」が92.7%で圧倒的に多く、一度体内に入ると『ごく一部が肝臓で代謝され、便とともに排出されるほかは臓器や組織の間で循環をくりかえし、蓄積されて』(*3)いきます。(ダイオキシンは脂肪に溶けやすいので、肉や魚、卵や乳製品などの動物性食品に多く含まれます)
そんな恐ろしいダイオキシンですが、さすが自然は偉大です。なんと、食物繊維にダイオキシン(食べた分+蓄積された分)を吸着して体外へ排出するはたらきがあるのです!
下の表をご覧ください。注目は米ぬか繊維のダイオキシン吸着率の高さです!
食物繊維 | ダイオキシン類の吸着率(%) |
---|---|
米ぬか繊維 | 86.5 |
そば繊維 | 71.9 |
ほうれん草繊維 | 71.6 |
だいこん(葉)繊維 | 70.1 |
あわ繊維 | 67.1 |
きび繊維 | 64.7 |
ごぼう繊維 | 53.8 |
キャベツ繊維 | 52.4 |
おおむぎ繊維 | 47.7 |
だいこん(根)繊維 | 44.8 |
コーン繊維 | 42.2 |
あずき繊維 | 30 |
セルロース | 2.3 |
米が主食の日本人で良かったと心震える瞬間です。圧倒的なダイオキシン吸着率を誇る米ぬか繊維は、玄米を食べてさえいればもれなく摂取することができます! なんといったって、玄米の一番外側にある薄い皮が「米ぬか」なのですから。
栄養を与えながら毒を排出させるなんて、玄米とはなんて人間への愛に満ちた存在なのでしょう。
玄米選びの留意点
そんな素敵な玄米ですが、買うときは有機栽培(無農薬、無化学肥料農法)のものを選ぶようにしてください。農薬にもダイオキシンは含まれますから、農薬のかかった玄米を食べてはせっかくの排毒作用が減じてもったいないですからね。
有機栽培の玄米はスーパーでは手に入れにくいかもしれませんが、自然食品の店やインターネット通販で簡単に入手可能ですから利用をご検討ください。↓
↑ここ10年ほど、こちらのお店(京の米職人)から有機玄米を真空パックで購入しています。梱包に清潔感があり、購入時に分つき米も選べるのが良いです。
次項:美味しい玄米の炊き方
それでは次の項目(「玄米の美味しい炊き方は?」)で、普通の炊飯器で玄米を美味しく炊く方法をご紹介します。
(*2)(*3)教育図書 「五訂食品成分表」