マクロビオティックとは? その3「食物の陰陽判断」(見た目、収穫時期、種類、味付け、調理法)

無双原理によって食物も陰陽で分けることができる。各人の陰陽バランスに応じて中庸の(調和のとれた)ものを選んで食べる必要がある。

陰陽の調和を目指す

マクロビオティックでは、「陰陽の調和がとれた状態」を目指し、食品を選んでゆきます。万病の原因が陰または陽の過剰であるとされているからです。

ですから、極陰でも極陽でもない、真ん中あたりの、「やや陽」「やや陰」「ほぼ中庸」ゾーンの食物から選んで、主食の「全粒の穀物」(玄米)を中心(食事全体量の少なくても5割)にして食べていくことになります。

なお、全粒穀物を中心にするのは、全粒の穀物が食物の中でももっとも中庸でバランスがとれていて、食事の要とするのにふさわしいからです。

中でも玄米は、粉にせずとも完成された1粒のままゆでて食べられるので一番自然で、毒素排出能力や栄養素の面から言っても主食として最良です。(参考…マクロビオティックQ&A実践編『玄米の栄養と排毒効果』)

食物の陰陽表

では具体的に、どんな食物がどんな陰陽を持っているのか見ていきましょう。前述したように、選ぶべきは中庸ゾーンの食品です。極端に陽性、陰性の食物は避けなければいけません。

避けた方が良い食品群(上に行くほどより陽性が強い)

精製塩 / 卵 / 鳥肉(鶏、鴨、きじなど) / 獣肉(牛、豚など) / チーズ / 魚介

好ましい(中庸の)食品群(上に行くほどバランスが取れている。この中庸群の中から食品を選ぶと間違いない)

全粒穀物 / 豆類や豆を原料とした食品(小豆、胡麻、油揚げ、高野豆腐、がんもどき、豆腐) / 温帯性の野菜(ジネンジョ、ゴボウ、人参、カボチャ、蓮根、玉ねぎ、大根、きゅうり、白菜、小松菜、ネギ、キャベツなど) / 海藻(ひじき、わかめ、のり、昆布)) / 海水からとった天然のあら塩、植物油 / 刺激の強くない飲み物(三年番茶など) / ナッツ類 / 温帯性の果物 / 米あめ、麦あめなど精製していない自然甘味料

その他、常用品として天然古式製法の醤油・味噌・梅干し・たくあん

避けた方が良い食品群(下に行くほどより陰性が強い)
白米など精製した穀物 / 冷凍食品、缶詰 / 熱帯性の果物や野菜、ナス科の植物(ナス、トマト、ジャガイモ) / 牛乳、クリーム、ヨーグルト、アイスクリーム / 刺激の強い飲み物(コーヒー、紅茶など)) / 香辛料 / 砂糖など精製した甘味料 / アルコール / 防腐剤、着色料など化学物質を含んでいる食品
参考文献:『久司道夫のマクロビオティック入門編』(p.85,86)、『ゼン・マクロビオティック―自然の食物による究極の体質改善食療法

(*桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック』の巻末にわかりやすい「食物の陰陽表」が掲載されており、おすすめです。 )

中庸の食品群をさらに陰陽で分ける

人間が食べるのにふさわしい中庸の食品群がわかりました。さあ、ここからがマクロビオティックの実践に最もからんでくるところです。

中庸の食品群をさらに陰陽に分けて考え、人間の陰陽バランスを細かく修正していくのに役立てます。

人間と植物を比べたら、植物の方が陰性だった。けれど植物同士で比べると、その中でまた陰陽の差があるのです。そして、同じ野菜でも、育った場所や気候条件によって陰陽の違いが出てきます。

こういうことを細かく考えて食べていくのがマクロビオティックです。ややこしいですが、重要なので、ぜひついてきてください!

「大きさ、堅さ、色」による野菜の陰陽判断

大きく軟らかいものは陰性。小さく堅いものが陽性です。色は、赤っぽい方が陽性、青っぽい方が陰性です。

たとえば「小豆」と「大豆」では、小豆の方が小さくて赤いので大豆より陽性と言えます。

「育ち方」による野菜の陰陽判断

(短期間で)上に伸びるものは陰性(上昇)、(ゆっくりと)下に向かって育つものは陽性です(下降)。

ですから、たとえばタケノコとにんじんを比べたとき、タケノコはとても短い間に上に伸びるので陰性で、下に向かって育つにんじんは陽性と言えます。この性質から、一般的に根菜類は陽性と言えます。

「種類」による野菜の陰陽判断

極陰から極陽までを9段階に分けたとき、極陰を1とし、中庸が5~7極陽を9とすると、
・ナス科(ナス、トマト、ジャガイモ)……1.8
・いも類(里芋、さつまいも)……3.5
・葉菜(白菜、小松菜、大根の葉)……
・根菜(ごぼう、玉ネギ、にんじん、ジネンジョ)……

と大まかに分類され、野菜の中でも葉菜、根菜が好ましいとわかります。(*1)

それに対しいも類やナス科の植物は陰性が強いので、バランスを崩さないように食べ方を工夫する(揚げるなどして陽性化したり、寒い季節は食べるのを特に避けるようにする)必要があります。

(一般的に根菜にはイモ類も含まれます(*2)が、陰陽判断においてはイモ類と根菜は分けて考えます)

「気候」による野菜の陰陽判断

冷涼な地(陰性)で育った野菜は、そこに生まれた人(陰性)の調和をとるために「陽性」になります。逆に、暑い地方(陽性)で育った野菜は、「陰性」です。日本は大体が「温帯」に属しますので、陰にも陽にも寄りすぎない「温帯性の野菜や果物」を食べるのが自然です。(つまり身土不二ですね)

外国の、熱帯地域で育つバナナやマンゴー、パパイヤ、アボガドなどや、熱帯原産のナス科の植物であるトマト、ジャガイモ、ナスは、非常に暑い所に住む人間を冷ますために実るので、極端に陰性で、日本人である私たちは避けた方がバランスが崩れにくいです。

なお、日本の中でも北海道は「冷帯」、沖縄の石垣島などは「熱帯」に属しますので、北海道に住む人は本州の人より「陽性」な食べ物、沖縄に住む人は本州の人より「陰性」の食べ物を取った方が陰陽のバランスが整う場合があります。

また、たとえ同じ野菜でも、育った土地の気候で陰陽の差が出ます。

たとえばカボチャは陽性野菜の代表格ですが、中でも北海道のカボチャが一番陽性なのです(寒い地で育っているため)。

「季節」による野菜の陰陽判断

また、夏に実る野菜は、夏という陽性の季節を中和させるために「陰性」になります。スイカやキュウリなど、暑くなると自然に食べたくなるものは陰性であることが多いです。

他、代表的な夏野菜にナスやトマトがありますが、これらは陰性が強すぎる「極陰の野菜」として通常は避けるべきものとされています。ですが、酷暑のときなどは体も陽性に大きく傾いて苦しくなっているので、ナスやトマトを食べることが害になりにくいです。

寒い季節に実るものは陽性です。

「成分」による野菜の陰陽判断(※活用に注意が必要)

陰陽の考え方-無双原理・陰陽の特徴」でも触れましたが、陰陽指標ではK/Naが5以上だと基本的に陰、5以下だと陽とされます。数値が5に近ければ近いほどバランスがとれています。中庸ゾーンはK/Na=5~7とされています。(*3)(K=カリウム、Na=ナトリウム)

カリウムやナトリウムの値は食品成分表に載っています。ただ、この値は栽培方法(有機栽培か、農薬や化学肥料を使っているかなど)や気候の違いで大きく差が出てきます。ですから、もっともバランスがとれているはずの「玄米」も、食品成分表の数値で見るとカリウムの割合がとても多くなっていたりします。

そのため、「K/Na」の陰陽指標は参考程度に活用することをおすすめします。まずは色や大きさ、形から陰陽を判断してください。

調理方法で変わる野菜の陰陽

陰陽の考え方-無双原理・陰陽の特徴』でお話ししたように、「熱い=陽」、「冷たい=陰」です。

これを調理方法に応用させると野菜の陰陽バランスを変化させることができます。

たとえば、時間をかけてゆっくり煮込んだりすると陽性に傾きます。

逆に生のまま食べたりするのは陰性度が強いということになります。

ですから、極陰性の野菜(ナスやトマト、ジャガイモ)を食べたいときには、揚げたり、炒めたり、煮たりして、じっくり火を通すようにしてください。そうすれば少しは陰性が弱まって安全になってきます。

(※ただし、いくら熱を加えて調理しても、元々人間より陰性である植物が、動物のように陽性になることはありません。)

また、細かく刻むとより陽性、になります。陽性の野菜(ゴボウやにんじん)をもっと陽性にして食べたいときなど、みじん切りかそれよりもっと細かく刻んで炒めてください。この原理を応用したのが、食事療法にも使われる鉄火味噌(てっかみそ)です。

「味つけ」で変わる陰陽

前項の『陰陽の考え方-無双原理・陰陽の特徴』でも触れたとおり、味において、塩がきいている(しょっぱい)と陽性ということになります。

ですから、同じ味噌汁でも、「陽性を強くしたいな」と思ったら、具を陽性のもの(カボチャやにんじん)にするだけでなく、味を濃くすることでも陽性になります。

また、酸っぱい、辛いは陰性です。これを利用して、夏などに「少し陰性にしてさっぱりさせたい」と思ったら、香辛料をきかせたり酢を使ったりすると陰性になります

陰陽がわからなくなったとき

食べ物の陰陽が形や色で判別できなくなったときは、あまり深く考えず、旬の野菜から、根菜(ゴボウ、にんじん、大根など)、球形野菜(キャベツ、玉ネギなど)、葉菜(ブロッコリー、大根の葉、小松菜)をバランス良く選んで食べるようにしてください。その際、「食べたいなあ」と感じる野菜を中心にすると良いでしょう。食べたいと感じるのは、体がその野菜を必要としているからです。

豆は、脂肪の少ない小豆を常用するのが最も無難です。

海藻は、昆布、わかめを中心に、たまにひじきを取り入れると良いでしょう。

そんな感じで食べていれば、まず間違うことはありません。食物の陰陽を知り、考えて選ぶ能力も大事ですが、そう堅く考えなくても上記の基本をおさえていれば恐れることもありません。

補足:ほうれん草について

ほうれん草と言えば栄養価の高い野菜の代名詞なのですが、マクロビオティックではほうれん草は蓚酸(シュウ酸)の含有量が高いため避けた方が良いことになっています。

シュウ酸は体内でカルシウムと結びついて結石の原因となったり、「ナトリウムを消す」(=食べると陰性になってしまう)(*4)とされています。

しかし、シュウ酸はアク(えぐみ)の元で水溶性ですから、たっぷりの湯でゆでて、流水にさらせばだいぶ減らすことができます。ですから、そう恐れることもないとは思います。

ただ、シュウ酸が気になるという場合は、小松菜を利用した方が安心できるかもしれません。

次項:食物の陰陽判断クイズ

次の項目(マクロビオティック陰陽理解度をチェック! 食物の陰陽判断クイズ(全5問)(中級))で、今回学んだことが定着しているかチェックしてみましょう!

(クイズを飛ばして次を学びたい方は「マクロビオティックとは? その4~人間の陰陽判断」に進んでください)

(参考:*1、*3、*4桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック』巻末「食物の陰陽表」
*2 wikipediaより「根菜」