マクロビオティックコラム

栄養失調~いわゆる夏バテ:前編-熱はなく、ひたすらだるい

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にんじんりんごジュース飲み過ぎて失敗』で書いたように、ジュースを飲み過ぎて具合が悪くなってしまった。

ああ、量が過ぎたのだな、これからはもっと飲み方を注意しなければいけないな……と反省して、翌日からはまた元気に一日を始められる……予定だった。

だが。ジュースの飲み過ぎがもたらした具合の悪さは、そのまま全身の不調へとなだれ込んだ。

その日の夜、布団に入ってから、どうも肺のあたりがおかしいと感じた。息を深く吸うと軽く痛む感じがする。

私は目を閉じながら脂汗をかいた。なんだ、この肺の痛みは。何かおかしな病気だったらどうしよう……。

一晩眠れば治るはず。そう信じて朝を迎えた私を、ひどい倦怠感が襲った。だるい。体が重たい。肺には相変わらず違和感がある。

これはどうしたことだ。歩こうとするとフラフラする。その日は外出する予定だったが急遽家でじっとしていることにし、布団にもぐりこんだ。

熱はなく、だるい

体温計

風邪だろうか? そう思ったが、熱はない。むしろ平熱よりも低いくらいで、いつから自分の平熱はこんなに下がってしまったのかと驚いた。

熱はない。鼻水も出ないし咳もない。けれどこのだるさは紛れもなく風邪のときのもの。

なんだかおかしな風邪だなあ……。

そう思いながらも、私は風邪を治すための食事を妹に作ってもらうことにした。ジュースの飲み過ぎで起きた不調なのだから、陰性病だろう。ということは陽性のものを食べなければいけない。

梅醤番茶を飲み、新食養療法で風邪の時のメニューとして載っていた「ねぎ味噌雑炊」をすすることで、私は体を陽性にもっていこうと頑張った。

悪化した

だが、なかなか症状は改善しない。風邪のときはあまりものを食べない方が良いと思っていたから、ねぎ味噌雑炊を一杯食べたらあとは寝るという生活をしていたのだが、回復があまり感じられない。

通常の風邪であれば、このように過ごせば一日ごとに何らかの前進が見られるものだ。少し熱が下がったり、体が楽になったり。

けれど今回の風邪は元々熱もなく、咳も鼻水もなく、ただだるいだけなのだ。そしてそのだるさが取れない。

ねぎ味噌雑炊と梅醤番茶だけで二日が経過した次の朝、私はトイレに行こうと立ち上がり、そのままくずおれそうになった。

な……なんだこれは。立つのもままならない。悪化している!

よろよろしながらなんとかトイレから戻ってきて、そのままベッドに倒れる。枕の位置にまで頭を持っていくことさえできない。

呼吸がぜえぜえと浅くなる。ああ、死ぬときってこんな感じなのかもしれないと本気で思った。

息絶えそう

雨 体調不良

「姉ちゃん、このまま死ぬかもしれない……」

食事の準備をしている妹に訴えると、「ええ~?」と笑われた。

トイレから戻ってきて倒れた姿のままベッドの上で時間が経過するのを待っているうちに、妹が「ご飯できたよ」と声をかけてくれた。

渾身の力を振り絞って起き上がり、食事が載せられたお盆を受け取る。その日のメニューには「ねぎ味噌雑炊」だけではなく、「大根おろし」と「かぼちゃとさらし玉ねぎのサラダ」もついていた。

久々のバラエティーに富んだ食事

この最悪の体調でこんなにたくさん食べられるだろうか。途中で吐いてしまったらどうしよう。そんな不安がよぎったが、とりあえずゆっくり、食べられるところまで食べることにした。

おそるおそる箸をつける。よく噛んで唾液と混ぜ、胃に静かに流し込む。意外と拒否反応はない。

体の反応を見ながら、私は食事を進めた。大根おろしも、美味しい。かぼちゃのほっくりとした甘さも懐かしかった。

けれど、まだ「自分は陰性過多だから陽性にととのえなければいけない」と強く思っていた私は、かぼちゃサラダにのせられていたさらし玉ねぎを食べなかった。

玉ねぎ自体は陽性だが、生のたまねぎとなるとあまり陽性とはいえないと思ったからだ。

さらし玉ねぎを残して完食した盆を妹に返す。すると妹は「玉ねぎ、食べられなかった?」と幾分残念そうな顔をした。

「生野菜は風邪の胃にはちょっときついかなと思って……。体調が良くなったら食べるからラップにくるんで冷蔵庫に入れておいてもらえる?」

そう言うと、妹は「うん」と盆を台所に下げに行った。その妹が、台所から声を上げる。

「レモン水、作ろうか?」

レモン水……? レモンっていったら陰性だよな……。そんなもの飲んで大丈夫かな……。さらし玉ねぎの陰性を気にして食べなかったくらいなのに……。そう思ったが、なんとなくレモン水という響きの爽やかさに惹かれ、作ってもらうことにしたのだった。

レモン水に体が目覚める

レモン水

妹が作ってくれた「レモン水」は、水100mlにオーガニックのレモン果汁を大さじ1杯ほど溶かしたものだった。淡黄色に濁ったレモン水を、吸い飲みに入れて一口飲む。

すると、なんと爽やかな香味! 目が冴え、体がシャッキリ元気になる感じがあった。私はそのレモン水を少しずつ喉に流し込み、全部を飲みきった。

「これ、美味しいね。体が軽くなる感じがする」
「クエン酸効果かな? ビタミンCも入ってるしね」
ビタミンC……? そう聞いて、私の中で何か反応するものがあった。

実は、生のにんじんジュースには、アスコルビナーゼというビタミンC破壊酵素が含まれているという情報(*1)をネットで得ていた。アスコルビナーゼは熱と酸に弱いから、ジュースにするときはレモン果汁などを加えると良いということも知ってはいた。

だが私はそれを無視していた。胃に入れば、胃酸でアスコルビナーゼも不活性化するのではないかと勝手に決めつけ、にんじんとりんごの果汁を混ぜたものをそのまま飲んでいた。

生のにんじんジュースに含まれるアスコルビナーゼが、私の体内のビタミンCを破壊したのか? それはわからない。だが、可能性はある。

現に、レモン水を飲んで体が目覚めるような感覚があったではないか!

そうだ、ビタミンC不足だー!!

私は自分への診断を「陰性過多」から「ビタミンC不足」に切り替え、ビタミンC摂取に乗り出した。レモン水を追加で飲み、さっき残したさらし玉ねぎもすぐにわしわしと食べたのだった。

後編へ続く……


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マクロビオティック羅針盤」運営者の遠藤です。

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北海道旭川市在住。お茶の水女子大学卒業。

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