数年前、東京でも格式のある神社を回る「東京十社巡り」というものを敢行して、その途中で「赤坂氷川神社」に詣でた。
私の好きな「箱の中の棒を振って出す」タイプのおみくじで出たのは大吉。大吉の出た神社は問答無用で好きになってしまう私はすっかり赤坂氷川神社のファンになって、いつかは氷川神社の大本、武蔵国一宮「大宮氷川神社」に行ってみたいと思うようになった。
そしてこの4月。東京で再び暮らす機会を得、時間に余裕もできたので、私は大宮氷川神社のある埼玉県まで足を運ぶことにした。
初めての埼玉県訪問である。気分は小旅行。
大宮氷川神社の周囲には、鎮守の森の役割も兼ねているのだろうか、大宮公園という緑地が広がっている。そこでお弁当を食べたら気持ち良かろう。私は参拝の後に大宮公園でピクニックすることに決め、早速現地へ向かった。
電車で一時間ほどかけて大宮駅に到着。少し歩くと、神社へとまっすぐ続く参道が姿を現した。
背の高い木々が両端に並ぶ、歩行者専用の参道だ。神社の領域がここまで大きく町中にはみ出しているとは素敵だ。鎌倉もこんな雰囲気だった。大宮氷川神社は、昔からさぞ地元の人に大事にされているのだろう。
参道へ一歩入ると、木漏れ日が降り注ぎ、気分が洗われるようだった。まだ若々しい、水分たっぷりの新緑が、光を受け、風にそよいできらめく。私はかぶっていた帽子のつばを上げ、何度も木々を見上げた。
やがて三の鳥居の前に来た。おお、この規模の大きな雰囲気、伊勢神宮に通じている。
たどりついた朱塗りの楼門の前で、私は「やっと来たぞ!」と感慨を新たにした。手水を使い、一礼して本殿のあるご神域に踏み入る。
どっしりと構えた大宮氷川神社の神様は、何千年もの昔から、変わらずこの地を、ここを訪れる人を受け入れ、見守ってきてくださったのだ。
その広い心が伝わってきて、感激してしまった。
境内に生えていた大木も、穏やかな包容力に満ちて、爽やかな光を投げかけてきてくれる。
大木周辺のポイントが気に入った私は、そこをしばらくうろうろしてから参拝を済ませた。ずっとここにいたい気もするが、せっかくお弁当も持ってきたことだし、お昼タイムにしよう。
一度境内を出て、大宮公園に向かった。ベンチに腰掛け、弁当を膝の上に広げる。メニューはもちろんマクロビオティック!
鉄火味噌おにぎり、小松菜と油揚げの煮浸し、もろみべったら漬けという、 美味しくて簡単でお気に入りの組み合わせ。家で食べるのも良いが、アウトドアにもぴったりだ。
玄米おにぎりを、いつもと同じように「1、2、3……」とカウントしながら食べる。元々早食いの癖があった私は、いまだに回数を数えながらでないと50回以上噛めない。
大宮公園の風に吹かれながら、玄米ご飯を50回噛もうとカウントしている私は、なんだか存在自体がマクロビオティックだった。
東京にいようが、埼玉に行こうが、北海道の実家で過ごそうが、インドアだろうがアウトドアだろうが、マクロビオティックは常に自分と一緒なんだなあ……と、自分に寄り添っていてくれるマクロビオティックを感じ、心強かった。
もう一体化しちゃって、離れられないよね。相思相愛? ラブラブだね。そう、私とマクロビオティックの歯車は、がっちりと噛み合って、離れることはない。
食後に、持参した水筒の水で一服。元々200mlしか入らない小さな水筒だが、マクロビオティックで鍛えた私は、その200mlのうち、キャップに一杯くらいの水を飲めば渇きが癒される。
少ない水分量でも足りるのは、自由にトイレに行けない外出時には特に便利だ。
やっぱりマクロビオティックって実用的だわ……とマクロビオティックに感心しながら、弁当の空き容器をリュックにしまい、私は再び境内へと向かった。最後に、あの空気をもう一度満喫するために……。
結局、一時間半程度で終わるかと思っていた滞在は三時間となり、充実した大宮氷川神社初訪問となった。
大宮公園で食べたマクロビオティック弁当の思い出とともに、ずっと忘れないよ! そしてできれば、またいつか行ってみたいな。
追記:九年後に思う
2018年追記:九年前に書いた上記コラムを読み返して、自分が書いたものながら苦笑してしまった。
もう一体化しちゃって、離れられないよね。相思相愛? ラブラブだね。そう、私とマクロビオティックの歯車は、がっちりと噛み合って、離れることはない。
……こんな風に書くくらい、当時の私はマクロビオティックに浸っていたのだな。
相思相愛だったはずのマクロビオティックとは、人間関係に例えていうならば、上記コラムを書いてからたった五ヶ月後に"別れた"(「マクロビオティックという学舎を卒業するとき」参照)。
理由は、これまた人間関係にたとえるならば、「性格の不一致」。
相手(マクロビオティック)と仲良くやろうとしすぎて、私が無理に相手に合わせすぎて疲れてしまった……という感じ。
今は、一人で行く健康道。やっぱり健康道は、一人、マイペースに歩むのが一番だ。