食べる必要を感じなかったことからずっと無視してきたマクロビオティック界を代表するアイディア食材「セイタン」を完全粉から作ってみて、その意外な美味しさに気を良くした私。
次は別の作り方を試してみようと、グルテン粉を買い求めた。
なんでも、グルテン粉を使うと、完全粉から作ったときに地獄のように大変だったグルテン抽出作業がいらずにとても楽なのだという。
↑親切にも、商品に張られたシールに材料や作り方が書いてある。なになに、グルテン粉200g、地粉20g、塩小さじ1/2……。ふむふむ、リマクッキングに載っていた配合と大体一緒だな。じゃあこれで作ってみるか……。
そう思いかけて、ふと疑問がよぎる。
どうしてグルテン粉だけじゃダメなんだろう?
塩を入れるのには、下味をつけるとか、グルテンの陰性を弱めるとか理由がありそうだけれど、地粉を入れなければいけないのはなぜ?
セイタンってタンパク質の固まりなんでしょう? だったらグルテン粉だけで作っても良さそうじゃない? よし、試しにグルテン粉だけで作ってみよう!
私はボウルにグルテン粉を一袋あけ、塩を振ってかき混ぜた。そこに水を加え、菜箸で混ぜると、5秒もしないうちにグルテン粉が水を吸って団子になった。
「は、早っ」
完全粉から手作りしたときは、ここまで来るのに2時間半はかかったのだ。それが5秒……。さすがグルテン粉だなあと思いながらできあがった団子をつまんでみると、存外に固い。ゴムの固まりのようだ。
引っ張る指にも力が入る。ずいぶん固いんだなあと驚きながらも満身の力を込めてバチンと引きちぎり、五等分にして醤油入りだし汁で煮込むこと一時間……。
煮上がったセイタンは、煮る前と同様、どこまでも固かった! 箸も容易に刺さらないから気軽に切り分けることもできない。ブリブリのはんぺんのようだ。
これで作った唐揚げやカツは、それなりに美味しかった。だが、いかんせん歯ごたえがありすぎる!
「こりゃいかん……。地粉を入れるのはもしかして柔らかさを出すためかもしれないな……」
その予想は的中した。地粉や完全粉を、定説通りグルテン粉の一割量入れたセイタンは、適度に柔らかくて味なじみも良く、調理したときに食感が鶏肉に近くてたいそう美味しかったのだ。
「セイタンをグルテン粉から作るときに小麦粉を混ぜるのは、セイタンの食感を良く(柔らかく)するためである。」
んもう、そういうことならそうと先に言ってよね! なんて思ったが、まあ、体当たりの実験で自分なりの理論を見つけられたのは得がたい経験ではあった。
こうして、私は「セイタン」という食材を知り、マクロビオティック料理の世界を広げたのだった。
知らなくても、食べなくても、生きていけるものだとは今でも思う。けれど、特にセイタンの唐揚げなんてとても美味しくて、いざというときにこのレシピを知っていると重宝するだろうなあと思える。
運動会とか、お花見とか、華やかなおかずが必要なときにとても使えそうだ。
セイタン。誰が考え出したか知らないが、すごい発明品を編み出すものだなあと感心する。(ただし、美味しいからと言って食べ過ぎるとタンパク質摂取過剰で腎臓や肝臓に負担がかかりそうなので、注意が必要だ。)
(『グルテン粉セイタンのレシピ』はこちら)