(その6「砂糖禁止の衝撃」からの続き)
「マクロビオティック」という単語を使ったブログタイトルにしてしまった以上、その名に恥じないよう、私はマクロビオティックについての勉強を遅ればせながら始め、そこで「砂糖は摂らない」という衝撃的なルールにぶち当たった。
砂糖がダメな理由を探る
砂糖が体に良くないことくらいは知っていた。しかし禁止されるほど悪者なのか? 一体なぜ? 何がいけなくて、何なら許されるのか?
理屈を知るために、創始者である桜沢如一氏の本を読んだ。入門書的な本では納得しきれず、深く穴を掘っていくように難しい本にも手を出した。
本を通じ、私は桜沢氏の言葉を直接聞いた。
桜沢氏は言う。不自然に、化学的に精製された白砂糖だからいけないのだ。体のバランスが大きく崩れ、抵抗力も落ちる。昔ながらの自然な砂糖であれば、そこまで忌避する必要はない。(*1)
かたくなになっていた心が少しほぐれた。砂糖が全部ダメなのではない。白砂糖がダメなのだ。だったら、私が今まで使っていた粗糖は、きっとそう悪くない。
砂糖がいけないなんて何をバカなことを言っているかと警戒心に肩を怒らせていたのが、粗糖を認めてもらえたことで落ち着き、桜沢氏の言うことを素直に聞いてみる気持ちになった。
アトピーへの感謝
私は、白砂糖の害を学ぶ中で、桜沢氏からマクロビオティックの秘密をたくさん教えてもらった。
この世には、人間が自然の一部として幸せに生き、暮らすための「正しい食」があるのだということ。宇宙を支配する陰と陽。その調和を常に考えることで、心身の、人生のバランスがとれるということ。
マクロビオティックのことなんて知らずに、アレルギーだからとなかば仕方なく実行してきた肉・卵・牛乳の除去食は、マクロビオティックの理論にかなうものであった。病人食だと思っていた除去食が、実は全人類にとってふさわしい健康食だったと知り、とても驚いた。そして、アトピーに深く感謝した。
アトピーでなければ、肉や卵をもっともっと食べていただろう。アトピーだったおかげで、私は知らず知らずのうちに陰陽のバランスがとれたものを食べてこられたのだ。
何たる僥倖! ありがたい!
その理論は信頼に足るものだと私は直感した。確かに科学的には証明できない部分もあるのだろう。だが、私のひどいアトピー性皮膚炎は、紛れもなく食べ物によって治ったのだ。
西洋医学の診断と、マクロビオティックの理論は合致している。これはきっと偶然ではない。マクロビオティックは真理なのだ。多少納得できなくても、乗っておけば間違いない。とりあえず乗っておけ。マクロビオティックはノアの方舟だ。
マクロビオティックは、深い哲学を秘めていた。その哲学を食べ物に当てはめ、料理として具現化させるというのがたまらなく面白かった。
食べられる哲学!
マクロビオティックをきちんと学んでから、私は主食を玄米100%に切り替えた。茶碗に盛った玄米ご飯にゴマをかけ、梅干しをのせる。私はそれをしみじみと眺めた。
今、哲学が形を持って自分の目の前に現れている。この玄米ご飯は哲学そのものなんだ。中庸の精神を表しているんだ。
中庸の精神を食べれば、中庸の精神が身につく。食べ物が、私を作る。だから、なりたい自分になれるように、食べ物を選ばなければいけない。
除去食による禁欲的な食生活は、私が望んだわけではなく、外部からの命令に従って行っていたようなものだった。「アトピーだから、湿疹が出るから、食べてはいけません」。肉に手を伸ばそうとしたらバチンと誰かからその手を叩かれる。叩かれるのがイヤだから食べない。そんな感じだった。
けれど、マクロビオティックを学んでからは、「食べたいけれど我慢する」という意識がまったくなくなった。動物性の食品は、たとえアトピーでなくても食べない方が良いものだとわかったからだ。
湿疹が比較的出にくかった豚肉や羊肉をたまに食べたりしていたのもやめ、完全に精肉を買わなくなった。
白砂糖を避けるためにチョコレートや市販のケーキ、クッキーを食べなくなった。
果物や、トマト、ナス、ジャガイモなどの陰性過多食品を避け、自分のバランスを中庸にととのえてくれるであろう食品を考えて摂るようになった。
除去食だけの時代より、明らかに食生活が洗練された。結果、ますます皮膚が健康になり、それまでは乾燥する季節には必ず首の後ろや腹、胸の皮膚に湿疹が出ていたのがなくなった。
もちろん、油断してアレルゲンを多く摂れば湿疹は出る。だが、基本的にマクロビオティックを実行している限り、皮膚の状態はほぼ完璧だ。私の人生の中で、一番調子が良い。
最後に皮膚科に行ったのはもう二年ほど前になるだろうか。そのときにもらった薬はほとんど使われないまま今も残っている。
【追記】
上記以後、マクロビオティックを開始してからの実践の記録は『砂糖がダメ? そんなの知らん~マクロビオティック実践記1』に続く。