健康を保つため、マクロビオティックが教えてくれていることは色々あるが、私にとって実行が一番難しく、そして実行できれば格段に体調が良くなることが何なのか最近気づいた。
「夜遅くに食べないこと」だ。
「寝る三時間前に食べない」と表現されることが多いが、夜間は消化能率が落ちている。最後に食べてから就寝まで、本当は五時間くらい間を空けるのが望ましいと個人的には感じている。
なのに、お腹が空いてくると、「三時間前までなら食べていいんだよね」とソバをゆでて食べたりしてしまう。
それで終わればまだ良いのだが、先日、夕食後に少し食べたのがきっかけで勢いがついて、お好み焼きやレーズン入りおやきやらまで食べてしまった。
食べれば食べるほど、胃の現実と脳の指令が乖離していく。お腹はいっぱいなのに、まだ食べたいと思ってしまうのだ。
結果、胃はガチガチ。時計を見れば夜の十一時。あと三時間後……つまり、二時に眠ればいいのねと自分を納得させた。
だが、二時になっても胃は膨れたまま。もう少し消化を待とうと寝る時間を遅らせ、三時までインターネットをして時間をつぶしてみても、お腹は苦しいまま。
仕方なく布団に入ることになるが、胃が重たくて寝つけない。一時間くらいじたばたしてようやく眠れたら、朝、今度はなかなか起きられない。体が休まっていないから、たくさん寝てもすっきりしないのだ。
起きたら起きたで、胃もたれしていて元気が出ない。もう、踏んだり蹴ったりだ。
お腹がいつまでも空かないので、何も食べられない。夕方の四時を過ぎてようやく玄米ご飯を茶碗に一杯と、味噌汁をお椀に半分飲む。前日に精一杯膨らませた胃は、中身は少ないのに拡張したままだ。これは、引き締めないといけない。
その一食以降、何も食べない決意をする。食べた量が少ないから、八時になる頃にはだいぶ空腹を感じてきた。一夜にして過食に慣れた体が、様々な煩悩を発してくる。昨日はあれだけ食べたじゃんよ、今日も食べさせてよ。イカの生姜醤油焼きとか~ポン鱈とか食べたいなあ~。
ああ、肉体がわがままを言う。甘やかしたツケだ。私は肉体に答える。絶対食べないからね。食べたら元の木阿弥だ。こうるさい肉体の欲望め、今、空腹というムチによって打ち据えてくれる!
空腹感はピークに達し、食べるのを我慢するのが本格的に辛く感じられる。ああ、こんな苦労をするなら、最初から腹八分目で終わらせておけば良かったんだよ。度が過ぎるほど食べたから、度が過ぎるほど食べるのを我慢しなきゃいけなくなるんだよ。
空きっ腹を抱えたまま風呂に入ってしまうと、憑き物が落ちたように精神的にストンと楽になった。限界を超えて、平穏な境地に入ったようだった。
その日の夜はすぐ眠りに落ちた。翌朝、すっきりと早起きできた。やる気に満ち、体力もあふれている。なんだこの違いは! 空腹で眠ると、こんなに幸せな翌日が待っているのか!
過食の度合いが前代未聞にひどすぎたせいで、空腹による幸福にはたと気づかされたのだった。
夜遅く、お腹が空いたと思ってちょこちょこ食べるのは楽しい。我慢した方が良いという理性は、「ちょっとくらいいいか」という欲望に負けてしまいがちだ。ここをこらえるのには少し力がいる。
だが、欲望の言いなりになって食べてしまうと、あとになってその報いが十倍くらいになって返ってくる。それなら、欲望が小さいうちに説き伏せてしまった方が良い。一番労力が少なく、得るものが大きい手段だ。
「夜遅くに食べないこと」。この教えが身にしみた。頭でわかっていても、体で納得しなければ、人はなかなかそれに従えないものなのね。
でもこれからはきっと、守ってみせる。空腹で眠って翌朝すっきりした頭と体で目覚めて一日を有効に使えるのと、欲望と腹を満たして翌日だるいまま過ごすのとどちらが良いかという話なのだ。
もう、もちろん前者! 絶対前者だ!