私が初めて買った圧力鍋、アサヒ軽金属の「スーパー活力なべ」。
炊飯器で炊いた玄米に満足していた私に、「玄米の底力はそんなもんじゃない」と、玄米の限界点突破的美味しさを引き出して教えてくれた。
この圧力鍋のおかげで私は改めて玄米に惚れ直し、「有機玄米さえ食べ続けられるのなら私の人生成功だ」とまで思えるようになった。
二つの失敗談
だが、炊飯器に比べ、どこまでも正確なアナログさが要求される圧力鍋。指定された米と水の分量を守って火にかけ、シュンシュンとオモリが揺れれば台所にすっ飛んでいって火を弱め、時間になったら火から下ろさなければいけない。
そんな圧力鍋の掟を、私は過去に二回破り、「あちゃー」な失敗をしてしまったことがある。以下、ご紹介したい。
失敗1:水加減を多くしすぎた
一つ目。水加減の失敗。
初めてスーパー活力なべで玄米を炊こうとしたときのことだ。付属の説明書には、浸水時間がどのくらいの米何カップに対して水を何cc入れるかが細かく指示されていた。
そのとき、私は玄米を48時間浸水させていた。説明書で言うところの「発芽玄米」基準だ。
発芽玄米は、浸水時間の少ない「玄米」よりも、水加減を少なめにすることになっていた。だが、私はそれに逆らった。
「軟らかめのご飯が好きだから、水加減を多めにしよう」。
私は規定よりも90cc多く水を入れた。炊飯器では、規定量よりも水を多く入れれば入れるほど、炊きあがりが軟らかくなった。そのノリだったのだ。
だが、できあがってフタを開けてみて、「あれ?」となった。
↑表面に、水が張っている……? お粥のような見た目の炊きあがりに戸惑いながらもしゃもじで混ぜた。
混ぜれば、浮いていた水もなんとかご飯になじみ、かなり軟らかいながらもそれなりに美味しい玄米ご飯にはなった。
その、軟らか玄米ご飯を食べながら思った。圧力鍋は、炊飯器とは違って、少しの水加減の差が大きな炊きあがりの差になるようだ。
軟らかく炊きあがるというのを超えて、ビシャビシャになってしまう。
教訓。圧力鍋においては指示された水加減は守ろう。
失敗2:長く火にかけすぎて焦がした
失敗、二つ目。
圧力鍋での玄米炊きにも慣れてきた頃、私は、シュンシュン言い出した圧力鍋に駆け寄り、火を弱め、キッチンタイマーをセットした。
この状態で10分。そしたら火から下ろして、内圧が下がるのを待つ。
いつもの工程なので、忘れるはずはなかった。私は仕事部屋に戻り、パソコンの前に座ってイヤホンで音楽を聴きながら作業を再開した。
パソコン画面の右下に表示されている時刻をチェックする。あと10分後にタイマーが鳴る。その音は大音量なので、イヤホンをつけていても聞こえるはずだった。
だが。仕事に集中し過ぎると、私は音が聞こえなくなる。はっと気がついてパソコン画面の時計を見たら、一時間経過している。……一時間?
あれ? 私、火を弱めに行ったっけ? いや、行っていない気がする。タイマーの音、聞こえなかった。やばい、まさか……。
私は台所に走った。圧力鍋のオモリは、とろ火で揺れ続けていた。
10分加圧のところを、一時間も加圧してしまった!!
私は慌てて鍋を火から下ろした。香ばしすぎる匂いが、漏れた蒸気から漂った。
色んな想像が頭を巡った。圧力のかけすぎで、ねばねばのクリーム状になっていたりして。それとも真っ黒焦げ? どうしよう、5合も炊いたのに……。
内圧表示ピンが下がり、私はそっとフタを開けた。
お焦げだ! 鍋の底に、1㎝ほどの厚さでお焦げができていた。
上はベシャベシャ、下は大火事……そんななぞなぞが昔あったが、まさにそんな感じだ。
幸い、このお焦げはガチガチではなく、しっとりした食感で、美味しく食べることができた。生存が危ぶまれた5合の玄米だったが、無駄にせず、すべて食べることができた。
教訓。加圧時間はすぐ過ぎる。いつでも飛び出せる心の準備をしておく。
失敗しても美味しいのが圧力鍋
だが、この二つの失敗でわかった圧力鍋の良さもある。
失敗したと思っても、案外美味しく炊きあがるということだ。
確かに柔らかすぎたりお焦げがあったりで、理想の炊きあがりとは言えなかったが、圧力鍋で炊いた玄米らしい香ばしい美味しさは損なわれておらず、十分に食べられた。
アナログゆえの失敗もあるけれど、アナログゆえに基本の仕事はしっかりこなしてくれる。そんな逞しさを感じた。
多少の失敗は受け止めてくれる圧力鍋。そんな度量の大きさに安心しながら、圧力鍋をもっと自由に使いこなすべく、私は研究を続けている。