マクロビオティックには、食事をととのえる以外にもう一つ大事なことがある。「運動」だ。
体にとって自然なものを食べる。そしてよく体を動かす。運動は肉体を鍛える。強くする。
運動は人間を陽性にする
運動は肉体にとって負荷だ。外的陰だ。外的陰は人間を陽性にする。明るくたくましくする。
食べ物を良くすることだけでも素晴らしいが、そこに運動を加えればもっとパワフルになる。
運動不足の自覚
だが私はずっと、「運動しなければいけない」というアドバイスを目にしても見て見ぬふりをしてきた。体を動かすことは嫌いではないが、あえて運動をするという時間を作っても続かないのだ。
実家にいた頃はなおさら、買い物のすべてを母がしてくれていたから、外出すら滅多にしない。もやしのような生活だった。
それでも食生活には気をつけていたから健康は保てていたのだが、本当はもっと運動した方がいいんだよなと心のどこかでずっと気にしていた。
生活の中に「歩くこと」が加わる
そんな、運動不足の私に転機が訪れたのは2009年4月。東京に出てきて妹と二人暮らしすることになり、私が買い出しに行く必要性が生じたのだ。
徒歩五分ほどのところにあるスーパーに、数日おきに通う生活が始まった。スーパーへの道のりは、存外に楽しかった。私は元気よく歩いた。
東京の道は狭く、そこに商店が密集している。その商店の一つ一つを眺めながら歩いた。
歩くことは前から好きだったが、ただ「歩く」という目的のために歩くのは気が向かなかった。けれど、「食料の買い出し」という不可避の目的のついでに歩くのならできそうだと思った。
何年ももやし生活だったから、たった五分の道のりでも私にとってはリハビリのようなものだった。足の筋肉に少しずつ負荷をかけ、遠出に耐える体力をつけていった。
ウォーキングラリーに参加
その成果が発揮されたのが、住んでいる地区で開催されたウォーキングラリー。2㎞四方ほどの中に散りばめられたスタンプポイントを巡り、最後に景品をもらうというものだ。
私はこれに参加した。途中で道を間違え、本当なら5㎞も歩けば済むはずが10㎞近く歩くハメになったのだが、それでも歩ききった。平気だったし、楽しかった。
私は自分の潜在能力に気付いた。私は歩ける。歩くのが得意だし好きだ。歩くという運動が向いている。よし、これからはもっと歩こう。
合わない運動靴のせいで足指を傷める
だが問題が一つ発生した。ウォーキングラリーのときに履いた運動靴がきつくて、親指の爪が圧迫されて痛くなってしまい、それから三日間ほど歩行に苦労したのだ。
靴さえきつくなければ、私の足はまったくの無傷だった。もっともっと歩けそうだった。靴のせいで歩けなくなるなんて、いかにも惜しいと思えた。
ウォーキングシューズ購入を決める
私は、長距離を歩くための靴を買うことを決めた。いわゆる「ウォーキングシューズ」というやつだ。
ウォーキングシューズは、デザインがあまり好みではないという印象があった。だが私も、ここまで人間として生きてきて、ある程度の割り切りができるようになっていた。
見た目より歩きやすさだ。私は歩きたいんだ。靴は、私の歩行をばっちり助けてくれるものでなければ。
ここ一番というお出かけのときは、可愛い、華奢なヒールの靴を履けば良いのだから。ただの買い物のときくらい、見た目なんて気にするな!
デザインなんて二の次。とにかく機能性重視。私は、「ウォーキングシューズ」のリサーチを始めた。運動靴を買うのは高校生のとき以来10年ぶり。情報収集が得意な私も、ウォーキングシューズに関しては門外漢すぎて、リサーチにも時間がかかってしまった。
そして私は、ようやく行動内容を決めた。アシックス公式ウォーキング直営店、「歩人館」に行く!
アシックス直営店「歩人館」
歩人館では、何やらハイテクな器械で足を立体的に測定し、正確な足幅や足長を出してくれるのだという。それを元に、自分の足にあったウォーキングシューズを提案してくれるそうなのだ。
私は、その測定器械にたまらなく惹かれた。今まで、自分の足のサイズを定規ですら測ったこともなかった。靴には興味があったのに、足そのもののことを知らなすぎた。
これも良い機会だ! 歩人館で私の足の特徴をつかんでくるぞ~!
私は歩人館に少し緊張しながら入店した。ウォーキングシューズ専門店……まったく未知の世界である。
一人の店員さんに話しかける。「あの、3Dで足を測定できる器械があるとうかがって、それに興味があるのですが……」「お測りいたしますか?」「はい」
足のデータを取る
靴下を脱いだ私の足に、店員さんが小さな半円形の黒いシールを貼っていく。測定するときの目印になるのだろう。
「ではここに足を入れてください」
底がガラス張りになった箱の中に片足を入れると測定開始だ。両足が終わり、データが出てきた。
おおっ、なんだか本格的!
↑真ん中のラインが平均値。このデータを見ながら店員さんが解説してくれたことには、私の足はアーチ(土踏まず)はしっかりしているのだが幅が狭く、甲が低く、幅広や甲高の靴を履いてしまうと足が中で前にずれて指が痛くなってしまうとのこと。
細めの靴から選ぶことになり、様々なものを試し履きした結果、アシックスではスタンダードなウォーキングシューズのモデル「pedala」(ペダラ)を買うことにした。
ペダラ購入
陸上選手が履く運動靴のような外観のウォーキングシューズを買おうと思っていたのだが、勧められたのはこの牛革張りの落ち着いた靴だった。アスファルトの上を一日中歩いたりする目的にはこの靴の方が良いとのことだった。
私はこの靴を買えたことが嬉しくてたまらない! 家に帰って早速防水スプレーをかけ、準備万端である。
玄関で、この靴はこぢんまりとしていて可愛い。晴れた日に、どこまでも歩いていきたいな!
(2016追記:この靴、めちゃくちゃ歩きやすく、気に入って、このとき買ったものは室内ウォーキングマシン用にし、後日、屋外用に同じ物をもう一足購入した。)