桜沢如一著『新食養療法』で、マクロビオティック開始直後の「第一期食」として掲載されていた謎の食品「そばがき」は、そば屋に食べに行ったり自分で作ることでその実態を知った。
だが、第一期食の献立にはまだ謎が残されていた。「ソバパン」である。
『ソバパン(ソバ粉を六、ウドンコを二、フスマまたはヌカを二のワリにてこね、ネギ、セリ、ミツバ、ゴボー、レンコン等を一、二割加えて、焼いたもの)』(p.50)
そばパンには別途副菜の指示がない。主食と副菜を兼ねる食品なのだ。それはなかなか魅力的だ。
そばパンという響きもなんだか美味しそうだし、せっかくそば粉も手元にあることだから、この際、ぜひ挑戦してみたいと思った。
だがいかんせん、桜沢氏の「ソバパン」への説明は簡素すぎる。レシピとしてはかなり曖昧だ。
一番困るのは「こねて、焼く」という過程に一切の具体的説明がないところ。こねると言ったって、一体どのくらいの分量の水で? 焼くとは、フライパンで? オーブンで?
わからない! けれど、マクロビオティック料理において、曖昧レシピに苦戦させられるのにはある意味慣れっこだ。推測して、体当たりでやってみるしかない。
参考にしたのは、『リマ・クッキング』掲載の「パンオサワ」のレシピ。完全粉、地粉、玄米粉、白ごまを、 水とごま油を加えて練り、オーブンで焼くというもの。
イーストも膨張剤も入っていないのだから、「パン」と言ったってどっちりした小麦粉のだんごのようなものである。きっと、この雰囲気は「ソバパン」にも通じているものなのだろう。
私は「パンオサワ」の粉と水の分量を「ソバパン」にも当てはめて考えた。「パンオサワ」を真似て塩も少し加えることにした。
そしてできあがったのがこの『そば粉のおやき(そばパン)(レシピはこちら)』である。
けっこうな弾力があり、噛みごたえも十分だが、多分このくらいのしっかりした感じで良いのだろうと思っている。
陽性と陰性の野菜が組み合わさっておりバランスが良いし、お腹にもたまる。ラップに包めば持ち運びも簡単で、副菜いらずだから手軽に食事を済ませられる。
覚えておくと使えそうなレシピだ。
それにしてもソバパン、これでいいんですかね? 桜沢さん。
こうやって、少ない記述から細かなレシピを想像して料理を作るときは、まるで考古学者にでもなったような気分だ。
骨の化石を掘り起こし、それを組み合わせて恐竜の骨格を作り、「きっとこんな感じだったんじゃないかなあ~」などと考えながら肉付けしていくような……。
私が今回作ったものが、桜沢氏のおっしゃる「ソバパン」とまったく同じかはわからない。だが、きっと「遠からず」という線は確実に行けていると思っている。
……曖昧な記述のレシピを見たとき、最初は「もっと細かく書いてくれればいいのに」と思っていたが、数をこなすうちにだんだんその曖昧さが面白くなってきた。
曖昧な分だけ、研究のしがいもあるというもの。
これからもこの調子で、マクロビオティックの謎にでくわしても尻込みせず、果敢に挑戦していきたい。