『空腹力』の中で紹介されていた「半日断食」で、朝食の代わりに飲むと良いとされる「ニンジン・リンゴ・ジュース」を私もぜひ試したくなった。
ジューサーは高い
実際に作るにはジューサーが必要である。だが、調べたところ、長く使えそうなジューサーは安価ではなかった。自分の体に本当に効果があるのかわからないもののために、ポンと出せる金額ではない。
考えを巡らせ、私は膝を叩いた。そうだ、市販の有機にんじんジュースを飲めばいいんだ。それなら、気軽ににんじんジュースの効果を試せるだろう。ジューサーを買うか買わないかは、それから決めよう。
缶ジュースを試す
翌日、早速私は自然食品店に赴いた。だが買おうと思っていたにんじんジュースが置いていなかったため、その自然食品店オリジナルの、有機にんじんと有機レモンがブレンドされたジュースを買った。
ジュースの効果を試すため、朝から午後の二時まで何も摂らず過ごし、完全に胃をからっぽにした。もうそろそろいいだろうという頃に、私はその缶ジュースのプルトップを開けた。
一口飲む。ああ、いけない、ただ流し込むのではなく、噛んで唾液と混ぜて飲めと書いてあったんだった。私は少しずつ、ゆっくりとジュースを飲んでいった。
薄い
だが、飲むごとに、何かおかしいと首をかしげたくなる。「薄い」のだ。ジュースなのだからベシャベシャなのは当然だろうが、それにしても、何か、にんじんを摂取しているという感じがしない。
私がイメージしていたのは、「野菜のエキス」。濃厚なにんじんのエキスが飲めると思っていた。けれどこれは違う。ただ、いたずらに水分ばかり摂取している気がする。
一缶飲み終えた私の胃はガボガボ。確かにお腹がいっぱいになるから一食の代わりにはなりそうだが、嗜好品としてのジュースを飲んだ後の感覚に近く、これで空腹力が鍛えられるとは思えない。
逆に陰性過多で弱ってしまいそうだ。
市販のジュースじゃダメ
やっぱり市販のジュースじゃダメなのかな……。そう思っていたときに、ちょうどそのとき読んでいた『乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか』に私の思いを裏付けるような記述を見つけた。
『もしあなたが、新鮮な野菜・果物ジュースのかわりに、瓶詰めの濃縮還元ジュースですまそうと考えているとしたら、それは大きな考え違いだ。(略)あなたに必要なのは、酸化していない新鮮なジュースだ。』(p.185)
ガーン! やっぱり?
『考えてほしい。ニンジンジュースが作られてからなぜ数週間後にも飲めるのか?』(p.185)
ガーン! ガーン!! そ……そうだよな。まったく、缶ジュースなんて新鮮ではない。酸化しているのか。効果がないのか。
そうか……安易に缶ジュースで済まそうとしたのが間違いだった。これはもう、搾りたてを飲むしかないではないか!
新鮮なにんじんジュースが飲みたい
ショックを受けながらその箇所に蛍光ペンで印をつけ、付箋まで貼って、私は本を閉じ立ち上がった。
飲むしかない! 新鮮なにんじんジュースを! しかしどうやって? ジューサーもないのに。
知らん! おろし金ですりおろして、ガーゼで搾ればいいんじゃないのか! ジューサーだってそういう原理だろう!
りんごはないからにんじんオンリーだ! にんじんなら有機栽培のがある!
え~い、やってやる、やってやるーー!!
私は腕まくりをして、台所にすっ飛んでいった。
おろし金ですりおろす
台所の野菜置き場をまさぐって、有機栽培のにんじんを一本拾い上げる。皮ごとすりおろすのだから、よく泥を落とさなければ! と、流水の下、たわしでガシガシ洗った。
そこからは根性一筋。おろし金で、力一杯すりおろしていく。たちまち二の腕に疲労物質が溜まって痛くなってくるが、短い休みを入れながらおろし続ける。
息を切らしながら、ようやく一本をおろし終えた。ジュースが搾れるようなフレッシュさは感じず、パサパサな見た目だが、本当に大丈夫だろうか……。
ガーゼでしぼる
貴重なおろしにんじんを、こぼさないようにそっとガーゼに移す。
そしてコップに搾る!(写真ではゴム手袋着用)
搾れば意外と出てくるものである。牛の乳搾りでもしているような気分だ。一滴も残さないよう、人力の限界まで搾り尽くす。
搾り終えた後のカスは、色も抜けてぺしゃんこ。
ジュースだけ飲むなんて、食物繊維も摂れないし、一物全体と言えなさそうで大丈夫かな……と思っていたが、『乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか』に『重要な成分は、この固形物を除いたジュースにも十分含まれている。』(p.184)とあり、その一文で納得した。
確かに、カスを見れば、重要な成分は抜けているんだろうなと思える。ご苦労さんと言いたくなる。
さて、こうして搾り上げた渾身のにんじんエキスをいよいよ飲む段に至った!
飲んでみる
中くらいのにんじん一本で、摂れたジュースは50mlほど。いかにも貴重品である。
しかし、なんとなく飲むのに抵抗がある。大根おろしの汁は飲んだことがあるけれど、にんじんおろしの汁は飲んだことがない。
「これ、本当に飲めるのかな……いや、にんじんって生で食べられるんだから、汁だって飲んでいいはずだよ」
コップを鼻に近づけ、匂いを確認する。うん、にんじんの匂いだなあ……。どんな味なんだろう。あまり美味しくなさそう……。ほとんど味がなくて、青臭いんじゃないかな……。
私は意を決してそのにんじんジュースを口に含んだ。
甘い!
「ん??」
なんだこれは! 甘い! 甘ぁ~い!
なんだこの甘さは。かなり直接的に、砂糖が入っているかのように甘い。にんじんスティックをかじったってこんなに甘くないぞ。どうして汁にすると甘いの? 汁を飲むのが、にんじんに入っているショ糖をダイレクトに味わう一番の方法なのだろうか。
口の中いっぱいに、複雑な味が広がる。コクがあって、まさに野菜のミルクといった感じだ。
鼻腔に抜ける香りもふくよかで、想像していたようないやな感じはしない。
これは……うん、なかなかいけるぞ。
甘く豊かな味わいを満喫して、私はすべて飲み終えた。50mlという少量だったせいもあるだろうが、胃に水っぽいガボガボ感はない。ちゃんと食事を取ったときのように、しっかりと満たされた感じがある。
そうか。これであれば、朝食として飲むのにふさわしいと言えるだろう。胃も落ち着くし、甘いから脳へのエネルギー補給にもなる。
それに、なんといっても新鮮である! 酸化もしていないし、にんじんの持つエネルギーを丸ごと取り込めるのは気分が良い!
なんだか体全体が生き生きと、フレッシュになった気がする。
搾りたてにんじんジュース、これは良いものを知った! 今後の生活にぜひ取り入れていきたい。
(追記:ジューサーを買おうと思って色々調べたが、どうもジューサーというものは本当に良いものを買おうとすると恐ろしく値が張るものらしい! とても手が出ない。
というわけで「おろしやすい」と評判の良かった京セラ製のセラミックおろしを注文した。人力でなんとか頑張ってみるつもりである!)